2025年4月9日、全国の書店員が選ぶ「本屋大賞」で、阿部暁子さんの『カフネ』が大賞に輝きました。
受賞スピーチで阿部さんが語った「憧れ」という言葉が注目を集めています。
この記事では、その「憧れ」の意味や受賞の裏側を、インタビュー記事などを基に詳しく解説します。
阿部暁子さんがどのような思いでこの賞を受け取ったのか、その背景に迫ります。
阿部暁子が語った「憧れ」とは
阿部暁子さんは、受賞スピーチで本屋大賞を「憧れ」と表現しました。
時事通信ニュースによると、東京都内で開かれた発表会で、「本屋大賞を『憧れ』と表現し、『自分を(この場に)立たせてくれたことを光栄に思う』と語った」と報じられています。
この「憧れ」は、単なる憧れではなく、彼女の作家としての原点と深く結びついているようです。
オリコンのインタビューでは、さらに詳しい背景が明かされています。
阿部さんは、第1回本屋大賞受賞作である小川洋子さんの『博士の愛した数式』との出会いを振り返り、「こんな物語を死ぬまでに書けるようになりたいと強く思いました」と述べています。
この発言から、「憧れ」は単なる賞への憧れではなく、優れた物語を紡ぐ作家になるという、長年の夢や目標を象徴する言葉であることがわかります。
本屋大賞受賞の瞬間
受賞の瞬間について、阿部さんは驚きと喜びが入り混じった心境を語っています。
ほんのひきだしのインタビューで、
「『受賞しました!』と編集者さんの感極まったような声を聞いても、『はあ』と心が追いつかない感じで(笑)。信じられない出来事が起こると、頭が真っ白になるという表現を私も小説に書いてきたのですが、本当は真っ白になるというより、思考がうまく働かなくなるのだなと考えていたことを覚えています」
と述べています。
この言葉からは、突然の大賞受賞に戸惑いながらも、その重みをじっくり感じ取ろうとする姿が伝わってきます。
また、本屋大賞が「読者さんたちの代表である書店員さんが選んでくださる賞」であることを強調し、「その中でおもしろかった、よかったよと本作を選んでもらえたことは無常の喜びです」と続けています。
書店員の支持を得たことへの深い感謝が感じられます。
『カフネ』に込めた思い
受賞作『カフネ』は、最愛の弟を亡くした主人公・野宮薫子が、弟の元恋人・小野寺せつなと出会い、食べることを通じて絆を深めていく物語です。
この作品が生まれたきっかけについて、阿部さんは編集者からの提案が起点だったと明かしています。
「弟に死なれた姉と、弟の元恋人の話はどうか」という一言に触発され、「冒頭の情景がぱっと浮かんで、同時に結末のシーンも見えました。
私はラストが浮かばないとなかなか書けないので、これは行けそうと思い着手しました」と語っています。
『カフネ』には、身近な「ご飯」の力が描かれており、阿部さんは「人が人を思う姿」を表現したかったそうです。
インタビューでは、「1年前の自分が書いたものを今回高く評価していただいて、それはすごく嬉しい」としながらも、「次回作は少なからず期待を持って読まれると思うので、その期待に応えられるようなものを書きたい」と意欲を見せています。
スピーチの裏側と感動の理由
阿部さんのスピーチが多くの人を感動させた理由は、その素直さと情熱にあります。
オリコンによると、阿部さんは「いただいた大きな贈り物に報いられるように、いい物語を書ける小説家になっていきたい」と決意を述べました。
この言葉は、受賞を一つの通過点と捉え、さらなる高みを目指す姿勢を示しています。
また、北海道新聞デジタルのインタビューでは、「本を愛する人たちの存在が“救い”であり“希望”」と語り、読者や書店員への感謝を強調しました。
Xの投稿でも「阿部暁子さんの本屋大賞受賞の挨拶を見て、泣いてしまった」という声が聞かれるなど、スピーチが聴衆に強い印象を残したことがうかがえます。
さいごに
阿部暁子さんの本屋大賞受賞スピーチとその裏側を振り返ると、彼女の「憧れ」が作家としての原動力であり、受賞がその夢の一つの実現であることがわかりました。
ここでは、記事のポイントをまとめます。
- 阿部さんの「憧れ」は、第1回本屋大賞受賞作との出会いから生まれた作家としての目標です。
- 受賞の瞬間は驚きと喜びが交錯し、書店員の支持に深い感謝を示しました。
- 『カフネ』は編集者の提案から生まれ、食べることを通じた人間関係を描いています。
- スピーチの感動は、素直な喜びと未来への決意に裏打ちされています。
阿部暁子さんの「憧れ」は、単なる言葉を超えて、彼女の作家人生を支える大きな力です。
本屋大賞受賞を機に、これからも素晴らしい物語が生まれることを楽しみにしたいですね。