千葉県銚子市を走る銚子電鉄は、わずか6.4kmの小さなローカル鉄道ですが、そのユニークな自虐マーケティングと地域愛で多くの人々を惹きつけています。
「自転車より遅い 歩くより速い」というキャッチフレーズや、「犬吠崖っぷちライン」という愛称、そして「ぬれ煎餅」や「まずい棒」などの副業で経営を支える姿は、まさに地域鉄道の挑戦の象徴です。
この記事では、銚子電鉄の魅力とその背景にある努力を紹介します。
- 銚子電鉄は「自転車より遅い 歩くより速い」を自虐ネタに、観光客を惹きつけるユニークな路線愛称「犬吠崖っぷちライン」を採用。
- 経営の約8割を「ぬれ煎餅」や「まずい棒」などの副業が支え、鉄道事業の赤字を補う。
- 犬吠埼や屏風ケ浦など、沿線の絶景観光スポットが魅力。
- 「崖っぷちプロジェクト」やイベントを通じて、地域活性化と観光誘客を推進。
- 地元住民やファンとの絆を大切にし、クラウドファンディングや応援団で鉄道存続を目指す。
自転車より遅い 歩くより速い!銚子電鉄の自虐的魅力
銚子電鉄は、竹本勝紀社長が自ら「自転車より遅い。しかし、歩くより速い」と語るように、スピードよりも地域とのつながりやユニークな体験を重視しています。
このフレーズは、銚子電鉄の公式サイトやメディアでたびたび紹介され、観光客や鉄道ファンの心をつかんでいます。
2025年4月1日から導入された路線愛称「犬吠崖っぷちライン」は、沿線の景勝地である犬吠埼や屏風ケ浦の「崖」にちなみ、経営の厳しさもユーモラスに表現したもの。
銚子電鉄取締役の西上逸揮さんは、J-CASTニュースの取材に対し、「銚子市の景勝地と合わせてPRをしていければ」と意気込みを語っています。
この自虐路線は、銚子電鉄の社風そのもの。過去には「経営がマズい」から生まれたスナック菓子「まずい棒」が大ヒットし、経営を支える人気商品となりました。
Xの投稿でも、「ぬれ煎餅とまずい棒多めに買いましたが、しっかり美味しかった」との声が寄せられ、ファンからの愛が感じられます。

ぬれ煎餅とまずい棒:経営を支える副業
銚子電鉄の2024年3月期の売上約6億円のうち、鉄道事業は2割ほどで、残り8割以上を「ぬれ煎餅」や「まずい棒」などの副業が占めています。
ぬれ煎餅は、1995年に手焼き実演販売から始まり、1997年には仲ノ町駅に工場を建設するほどの人気商品に成長。
竹本社長は日経クロストレンドのインタビューで、「ぬれ煎餅の存在を銚子電鉄を通じて知った人も多い」と語り、銚子の醤油文化との結びつきを強調しています。
まずい棒は2018年に「経営がマズい」を逆手に取った商品として登場。
コーンポタージュ味やチーズ味など多彩なフレーバーで、1年2カ月で120万本以上を売り上げるヒットとなりました。
2024年には「うなぎ蒲焼風味」や「スイートポテト風味」などの新商品も発売され、話題性を維持しています。
Xでも「ぬれ煎、美味しいですよね。お店で見かけるといつも買っています」との投稿があり、特に濃いめの「赤」派のファンが目立ちます。

犬吠崖っぷちラインの観光資源
「犬吠崖っぷちライン」の名は、犬吠埼や屏風ケ浦といった沿線の景勝地に由来します。
犬吠埼灯台は国の重要文化財で、関東最東端の絶景スポットとして知られ、観光客に人気です。屏風ケ浦は約10kmにわたる断崖絶壁で、荒々しい海の風景が魅力。
銚子電鉄はこれらの観光資源を活かし、「崖っぷちプロジェクト」を通じて誘客を図っています。
2025年4月には、JR東日本の特急「しおさい」の車内放送で「犬吠崖っぷちラインはお乗り換えです」とアナウンスが流れ、観光客へのPRを強化しています。
また、2025年4月1日から運行開始した観光列車「次郎右衛門」は、南海電鉄の車両を改装し、魚やネコをモチーフにした内装で話題に。
クラウドファンディングで1201万円を集め、922人の支援者が参加しました。
この列車は「シニアモーターカー」として、貸し切り需要にも対応しています。

崖っぷちプロジェクトと地域との絆
銚子電鉄は「崖っぷちプロジェクト」の一環として、2025年1月にデビューした歌手・永江理奈さんの楽曲「崖っぷち」とのコラボCDを主要駅で販売。
さらに、今夏には苦境を乗り越えた中小企業を集めた「崖っぷちサミット」を計画しています。
こうした取り組みは、経営の厳しさを逆手に取りつつ、地域やファンとの絆を深めるもの。
過去には、東日本大震災後の風評被害で観光客が激減した際、10万人以上がぬれ煎餅購入や乗車で応援に訪れ、黒字化に貢献しました。
地元住民の声も大きい。
銚子商業高校の生徒が開発した「ぬれ煎餅アイス」や、クラウドファンディングで集めた500万円での車両修繕など、地域の支援が銚子電鉄を支えています。
Xでは「子供達がお金を出し合いお煎餅を注文しました。銚子電鉄がんばれ!」との温かいメッセージも見られます。

さいごに
銚子電鉄は「自転車より遅い 歩くより速い」というユーモアと、ぬれ煎餅やまずい棒で支える経営、そして地域の観光資源を活かした「犬吠崖っぷちライン」の取り組みで、厳しい環境を乗り越えています。
地元住民やファンの応援が、鉄道の灯を消さず次の世代に繋げる力となっています。
ぜひ一度、銚子電鉄に乗って、犬吠埼の絶景やぬれ煎餅の味わいを楽しんでみてください。
地域の小さな鉄道が織りなす大きな物語に、きっと心を動かされるはずです。
