ベネズエラでは、長年にわたる政治的・経済的危機が続き、特に2025年から2026年にかけて米国による軍事行動がエスカレートしました。
2026年1月3日、トランプ米大統領はベネズエラに対する大規模攻撃を実施し、マドゥロ大統領を拘束したと発表しています。
この行動は、国連安全保障理事会(安保理)の決議なしで行われました。
なぜ安保理決議が採択されなかったのか、その背景には常任理事国の拒否権行使と国際法の解釈が深く関わっています。
この記事では、事実に基づいてその理由を解説します。
この記事のまとめ
- ベネズエラ危機では、米国が麻薬対策を名目に軍事行動を取ったが、安保理決議なしで実施された。
- 過去の事例(2019年など)で、ロシアと中国が米国提案の決議案に拒否権を行使し、採択を阻止した。
- 現在の状況でも、ロシアと中国は米国を侵略行為と批判し、安保理で米国非難の立場を取っている。
- 安保理決議がない理由は、常任理事国間の対立、特にロシア・中国の拒否権によるもの。
- 国際法上、武力行使は安保理授权や自衛権の場合に限られるが、米国は独自の正当性を主張している。
安保理決議が採択されない主な理由:常任理事国の拒否権
国連安保理の決議が採択されるためには、15理事国のうち少なくとも9カ国の賛成が必要で、かつ常任理事国(米国、英国、フランス、ロシア、中国)のいずれも拒否権を行使しないことが条件です。
ベネズエラ危機に関する決議案が採択されない最大の理由は、ロシアと中国の拒否権行使です。
過去の事例として、2019年2月28日の安保理会合では、米国が提案した決議案(人道支援の受け入れと公平な大統領選挙の実施を求めるもの)がロシアと中国の拒否権により否決されました。
一方、ロシアが提案した決議案(内政干渉の非難)も多数の反対で否決されています。
この対立は、ベネズエラのマドゥロ政権を支持するロシア・中国と、野党側を支持する米国・欧州諸国の溝を反映したものです。
2025年から2026年にかけての状況でも同様です。米国がベネズエラ沖での船舶攻撃や海上封鎖を実施した後、ベネズエラは安保理に緊急会合を要請しました。
2025年12月23日の会合では、ロシアと中国が米国を強く批判し、侵略行為と位置づけました。
しかし、米国非難の決議案は提出されず、採択に至っていません。
ロシアと中国は、マドゥロ政権を擁護する立場を維持しており、米国提案の決議があれば拒否権を行使する可能性が高いため、決議自体が提出されない状況が続いています。
ロシアと中国の立場:内政干渉と主権侵害の懸念
ロシアと中国は、ベネズエラ危機を内政問題とみなしています。ロシアのネベンジャ国連大使は、米国の一方的行動を「侵略行為」と非難し、中国も「国家主権の侵害」と主張しています。
これらの国々は、ベネズエラに経済的・軍事的支援を提供しており、マドゥロ政権の存続を国際的に支えています。
2019年の拒否権行使時、ロシアは米国案を「政権交代を狙ったもの」と批判し、中国は「外部勢力の干渉反対」を強調しました。
この立場は現在も変わらず、2026年の米国攻撃に対しても、ロシアは緊急安保理開催を支持し、米国を「侵略」と呼んでいます。中国も緊張激化の回避を呼びかけつつ、米国を牽制しています。
これにより、安保理で米国を非難する決議はロシア・中国の支持を得やすい一方、米国や欧州が提案するマドゥロ政権批判の決議は拒否権で阻止される構造です。
米国の立場と行動:安保理決議なしでの軍事介入
米国は、ベネズエラのマドゥロ政権を「麻薬テロ組織」と関連づけ、麻薬密輸対策を理由に軍事行動を正当化しています。
2025年以降、カリブ海での船舶攻撃を繰り返し、2026年1月3日には地上攻撃を実施、マドゥロ大統領を拘束しました。トランプ大統領はこれを「法執行機関との連携」と説明しています。
米国は、安保理決議を求めず一方的行動を取っています。これは、過去のイラクやリビア事例のように、安保理で合意が得られない場合に独自判断で介入するパターンを踏襲したものです。
安保理会合では、米国代表が「マドゥロ政権が地域の脅威」と主張し、行動の正当性を強調していますが、ロシア・中国の反対で決議は採択されていません。
国際法の観点:武力行使の正当性と安保理の役割
国連憲章第2条4項は、武力の威嚇や行使を禁止しています。
例外は、安保理の授权(第7章)か自衛権(第51条)です。ベネズエラの場合、米国は自衛や麻薬対策を主張しますが、国際人権団体や専門家からは「国際法違反」との指摘があります。
例えば、船舶攻撃は「殺人行為」や「武力による威嚇」とされ、安保理授权なしの封鎖は「戦争行為」に該当する可能性が指摘されています。
安保理決議がないのは、常任理事国の拒否権が武力行使の「歯止め」として機能している一方で、合意形成を阻害しているからです。
ベネズエラは米国行動を「侵略」と国連に訴えていますが、決議化には至っていません。
英仏の対応:常任理事国間の分裂
英国とフランスは、米国同盟国としてマドゥロ政権を批判しますが、安保理では米国を直接非難せず、中立的立場を取っています。
2025年の会合で、両国は「国際法遵守」を呼びかけつつ、米国批判を避けました。
この分裂が、安保理の統一行動をさらに難しくしています。
さいごに
ベネズエラ危機で安保理決議が採択されないのは、常任理事国間の深刻な対立、特にロシアと中国の拒否権によるものです。
国際法上、武力行使には安保理の役割が重要ですが、現状の分裂は危機の解決を遠ざけています。
最終的に、対話による平和的解決が求められますが、現在の緊張は地域の安定を脅かしています。
この状況は、国連の仕組みが大国間の対立で機能不全に陥る例を示しています。

