2025年4月13日に開幕した大阪・関西万博で、ネパールパビリオンの工事が建設費の未払いにより停止し、開館の見通しが立っていないことが大きな話題となっています。
多くの来場者が楽しみにしていたパビリオンが未完成のまま放置されている背景には、どのような問題があるのでしょうか。
また、こうしたリスクを軽減するために用意された「万博貿易保険」がなぜ機能しなかったのでしょうか。
この記事では、ネパールパビリオンの工事停止の原因と、万博貿易保険の役割や限界について、関係者の声や報道をもとに詳しく解説します。
- ネパールパビリオンは、建設費の一部がネパール政府から支払われず、2025年1月から工事が完全に停止。
- 工事は外観の約9割が完成していたが、未払いにより内装工事が進まず、開幕後も再開のめどが立っていない。
- 万博貿易保険は海外参加国の不払いリスクを軽減する制度だが、ネパールパビリオンの受注業者は加入していなかった。
- ネパール側は「期日までに支払う」と繰り返したが、資金面の問題で支払いが滞り、説明も不明確。
- 万博協会はネパール側の出展意向を支持し支援を表明するが、タイプAパビリオンの契約上、直接的な金銭補填は困難。
ネパールパビリオンの工事停止の原因とは?
ネパールパビリオンの工事停止は、ネパール政府が建設会社への支払いを怠ったことが直接の原因です。
関係者によると、2024年8月に着工したネパールパビリオンは、着工金が予定通り支払われたため順調にスタートしました。
しかし、その後の支払いが滞り、2025年1月から工事が完全にストップ。
外観は約9割完成しているものの、内部には資材や土が積まれたまま放置されています。
読売テレビの取材に応じたパビリオン関係者は、ネパール側の対応について次のように語っています。
「『支払います、支払います』と言って、(ネパール側が)支払ってこない現状です」と、繰り返し約束が守られなかったことを明かしました。
また、工事は開幕に間に合うスケジュールで進められていたものの、資金不足により中断を余儀なくされたと説明しています。
ネパール側は万博協会や建設会社に対し、「本国の都合で支払えなくなっている」と説明しましたが、具体的な理由は不明です。
ネパール大使館も「現時点で回答できることはありません」とコメントし、問題の背景が不透明なままです。
時事通信の取材に対し、ネパール外務省高官は「来週までに問題を解決したい」と述べましたが、解決の具体策は示されていません。
万博貿易保険とは? なぜカバーしなかったのか?
万博貿易保険の仕組み
万博貿易保険は、2025年大阪・関西万博の海外パビリオン建設を後押しするため、経済産業省が2023年8月に新設した制度です。
政府が全額出資する日本貿易保険(NEXI)を通じて、海外参加国による建設代金の不払いリスクを軽減し、国内建設会社の受注を促進する目的があります。
この保険に加入していれば、参加国の資金繰り悪化などで支払いが滞った場合、工事費の全額または大部分が補填されます。
ネパールパビリオンのケース:保険未加入の背景
ネパールパビリオンの場合、受注した建設会社が万博貿易保険に加入していなかったことが問題を深刻化させました。
関係者は「相手は一国の政府であり、未払いのリスクがあるとは思わなかった」と述べており、ネパール政府への過度な信頼が保険加入を見送った理由だと考えられます。
X上でも、保険未加入の判断について議論が交わされており、「保険未加入の業者、甘かったかもね」との投稿もされています。
このケースは、国際的な契約におけるリスク管理の重要性を浮き彫りにしています。
保険の限界と課題
万博貿易保険は有効なリスク軽減策ですが、加入は任意であり、すべての業者が利用するわけではありません。
また、保険の存在自体が十分に周知されていなかった可能性も指摘されています。
建築資材や人件費の高騰、会場である夢洲の物流混雑など、万博全体の建設環境が厳しかったことも、業者のリスク管理の優先度を下げた一因かもしれません。
タイプAパビリオンの特性と資金難の影響
ネパールパビリオンは、参加国が自前で設計・建設を行う「タイプA」に分類されます。
この形態は独自性の高い展示が可能ですが、資金調達や契約管理の負担が参加国に大きくのしかかります。
ネパールの資金繰り問題は、タイプA特有のリスクを象徴しています。
他の未開館パビリオン(インド、ベトナム、ブルネイ)とは異なり、ネパールの場合は資金面の問題が明確な原因です。
インドはタイプX(日本側が基礎部分を代行)、ベトナムはタイプB(協会が建設した建物を借用)、ブルネイはタイプC(共同入居型)であり、ネパールのような未払いリスクは報告されていません。
万博協会の対応と今後の見通し
万博協会は「ネパール側は引き続き出展の意向を示している。協会としてもしっかり支援していきたい」と表明していますが、タイプAパビリオンの契約は民間企業と参加国の間で行われるため、協会や政府が直接金銭を補填することは困難です。
開幕前にタイプBやXへの変更を促すこともできた可能性がありますが、工事が進んだ現状では解決が難しい状況です。
X上では、「え?支援に税金や府税市税が使われるん?」と懸念する声が投稿されるなど、協会の支援策に対する疑問の声も上がっています。
また、「日本側がうっかり立て替えたりしたら踏み倒されて回収不能になる」と警告し、未払い回収の難しさを指摘する声も上がっています。
ネパール以外の未開館パビリオン(インド、ベトナム、ブルネイ)は4月中の開館を目指していますが、ネパールパビリオンは資金問題の解決が不可欠であり、閉幕(2025年10月13日)までの開館が危ぶまれています。
さいごに
ネパールパビリオンの工事停止は、国際的なイベントにおける資金管理とリスク対策の難しさを浮き彫りにしました。
万博貿易保険という仕組みがあったにもかかわらず、業者側の判断ミスやネパール政府の不透明な対応が重なり、問題が解決に至っていない現状は残念です。
来場者の期待に応え、万博の魅力を最大限に引き出すためにも、関係者による早期の解決策が求められます。
万博協会やネパール側の今後の動向に注目しつつ、国際プロジェクトの信頼性と透明性の重要性を再認識する機会となりました。