2025年4月28日、ハワイアン航空機内で乗客の携帯電話が発火し、羽田空港に緊急着陸する事故が発生しました。
幸い、「防火かばん」により迅速に消火され、延焼やけが人は出ませんでした。
この事件は、航空機内での携帯電話やリチウムイオン電池の安全性について改めて注目を集めています。
この記事では、航空機内での携帯電話発火事故の原因、特にリチウムイオン電池の問題に焦点を当て、機内での発火予防策を詳しく解説します。
- 航空機内での携帯電話発火の主な原因は、リチウムイオン電池の内部短絡や劣化による発熱です。
- 衝撃、過充電、高温環境が発火リスクを高めます。
- 予防策として、正規品の使用、適切な保管、機内持ち込みルールの遵守が重要です。
- 航空会社は「防火かばん」などの対策を導入していますが、乗客の意識も不可欠です。
航空機の携帯電話発火事故の原因
航空機内での携帯電話発火事故の主な原因は、スマートフォンに搭載されているリチウムイオン電池の異常発熱です。
東京消防庁によると、リチウムイオン電池は内部の正極と負極がセパレーター(絶縁膜)で隔てられた構造ですが、以下のような要因で内部短絡が起こり、発煙や発火に至ることがあります。
- 衝撃や圧力: 落下や強い圧迫によりセパレーターが破損し、正極と負極が接触。電流が集中し、急激な発熱を引き起こします。たとえば、カバンが床に落ちた衝撃でモバイルバッテリーが発火した事例が報告されています。
- 過充電や劣化: 長期間使用した電池は内部に可燃性ガスが蓄積し、過充電や過放電で発火リスクが高まります。NITE(製品評価技術基盤機構)によると、2023年にはリチウムイオン電池関連の事故が397件報告され、過去最多でした。
- 製品の欠陥: 製造時の異物混入や安全装置の不備も発火の原因となります。低価格製品は安全性が不十分な場合があると、NITEの宮川七重課長は指摘しています。
実際、2016年にサムスン製「ギャラクシーノート7」がリチウムイオン電池の欠陥で発火事故を起こし、航空機への持ち込みが全面禁止された事例もあります。
ハワイアン航空の今回の事故では具体的な原因は未公表ですが、Xの投稿で「リチウムイオン電池が原因では」との声が多く、関心の高さが伺えます。
リチウムイオン電池の構造と発火メカニズム
リチウムイオン電池は、高容量・高出力・軽量が特徴で、スマートフォンやモバイルバッテリーに広く使われています。
しかし、可燃性の有機溶剤を電解液に使用するため、以下のようなメカニズムで発火に至ります。
- 内部短絡: 衝撃や変形によりセパレーターが破損し、ショートが発生。瞬間的な大電流で発熱し、電解液が気化して発火。
- 電解液の酸化: 劣化や過充電で電解質が酸化し、ガスが発生。ガスが蓄積した状態でショ 0x02C7C8熱や衝撃を受けると発火します。
- 熱暴走: 発熱が連鎖的に進行し、制御不能な発火や爆発に至る場合も。
KDDIの品質管理担当者、桑田さんは、「衝撃を受けた電池は、充放電を繰り返すうちに発火するケースもある」と述べ、即時でなく遅れて発火する危険性を指摘しています。
機内での発火リスクを高める要因
航空機内では、以下の環境や状況が発火リスクを高めます。
- 気圧変化: 機内の気圧低下が電池に微妙な影響を与える可能性。明確な証拠は少ないものの、気圧変化による膨張が議論されることがあります。
- 限られた消火手段: 貨物室では発火に即座に対応できないため、モバイルバッテリーは預け入れ禁止です。Xの投稿でも、「貨物室での発火は大惨事」との指摘があります。
- 乗客の不注意: 充電中の過熱、破損した機器の使用、熱がこもりやすいカバン内での保管がリスクを増大させます。
機内での発火予防策
航空機内での発火を防ぐには、乗客と航空会社の両方の対策が重要です。以下は具体的な予防策です。
乗客が実践すべきこと
- 正規品の使用: PSEマーク付きの安全基準を満たした製品を選びましょう。NITEは「安価な製品は安全性に欠ける場合がある」と警告しています。
- 適切な保管: モバイルバッテリーや携帯電話は、衝撃を受けないようハードケースや専用のポーチで保護。高温になる車内や布団内での充電は避けます。
- 充電管理: 目の届く範囲で充電し、就寝中や外出中の充電はしない。異常(発熱、異臭、膨張)があれば使用を中止し、適切に廃棄します。
- 機内ルールの遵守: リチウムイオン電池(100Wh以下は制限なし、100-160Whは2個まで)は機内持ち込みのみ可。預け入れは禁止です。ハワイアン航空では予備バッテリーは2個までと厳格です。
- 破損機器の持ち込み禁止: 膨張や損傷した電池は機内持ち込みも不可。事前に確認しましょう。
航空会社の取り組み
- 防火かばんの導入: ハワイアン航空では、発火した携帯電話を防火かばんで迅速に消火。Xでも「防火かばんの重要性」が話題に上りました。
- 消火訓練: 乗務員はリチウムイオン電池火災に対応する訓練を受けていますが、水没や窒息消火が効果的とされます。
- 規制の徹底: JALやANAでは、160Wh超の電池の持ち込みを禁止。国際線ではさらに厳しい場合も。
インタビューから学ぶ安全意識
NHKの取材で、大阪の田中進さんは、充電中のモバイルバッテリーが発火し「シューという音と炎でパニックになった」と語りました。
田中さんの妻は「外出直前で気づけたからよかったが、就寝中だったらと思うと怖い」と振り返っています。
この経験から、充電は常に見守ることの重要性が強調されました。
また、KDDIの桑田さんは、実験を通じて「300kgの圧力でも電池はすぐには発火しないが、後の充放電で発火リスクが高まる」と説明。
日常的な衝撃でもリスクが潜むことを示しました。
さいごに
航空機内での携帯電話発火事故は、リチウムイオン電池の特性と機内環境が絡む複雑な問題です。
ハワイアン航空の事例は、適切な対応で大事に至らなかったものの、乗客一人ひとりの意識が安全を左右します。
正規品の使用、適切な保管、ルールの遵守を徹底し、万一のリスクに備えましょう。
安全な空の旅のために、最新の情報を確認し、予防策を実践することが大切です。