ホタテがなぜ大量死しているのか?陸奥湾養殖ホタテの価格高騰と原因を調査

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青森県の陸奥湾は、甘みのある高品質な養殖ホタテで知られ、「100億円産業」とも呼ばれる地域の基幹産業です。

しかし、2024年夏以降、ホタテの大量死が深刻化し、水揚げ量が例年の1割にまで落ち込む事態となっています。

この影響でホタテの落札価格は過去最高値を更新し、漁師や加工業者は危機感を募らせています。

この記事では、なぜ陸奥湾のホタテが大量死しているのか、その原因と価格高騰の背景を調査します。

この記事のまとめ
  • 陸奥湾の養殖ホタテが2024年夏以降、記録的な高水温により大量死。
  • 稚貝のへい死率は52.5%、新貝は36.5%で、平年の2~5倍に達する。
  • 高水温は7月から10月まで続き、ホタテの生存可能な水温(24度)を超える27度を記録。
  • 水揚げ量は例年の1割~3分の1に激減、2025年4月は前年の4割未満。
  • 落札価格は1kgあたり475円で過去最高、品薄による価格高騰が消費者離れの懸念。
  • 対策としてカゴを深層部に沈める試みがあるが、プランクトン不足で効果は限定的。

ホタテがなぜ大量死しているのか?主な原因は高水温

陸奥湾のホタテ大量死の主な原因は、2024年の記録的な高水温です。

青森県産業技術センター水産総合研究所によると、ホタテが通常生息できる水温は5~23度程度ですが、2023年夏の陸奥湾(水深15メートル付近)では、7月末に23度を超え、9月2日に27度を記録しました。

この高水温が71日間続き、ホタテが体力を消耗して死亡したとみられています。

NHKの報道では、研究所の観測データによると、2023年7月から10月まで水温が平年より3~4度高く、9月上旬の5日間平均で27度に達しました。

JAXAの観測衛星データも、2023年8月下旬から9月初旬の陸奥湾の表面水温が28度前後を示し、異常な高水温が確認されています。

これが大量死の一因と分析されています。

2023年12月の調査では、陸奥湾全体で稚貝(生後1年未満)のへい死率が52.5%(平年11.5%)、新貝(生後1年4~9カ月)が36.5%(平年15.5%)と、平年の2~5倍に達しました。

特に青森市漁協や平内町漁協の浅い水深地域では、稚貝のへい死率が90%以上に上る地点もありました。

高水温以外の要因とその影響

高水温以外にも、ホタテの大量死に影響を与えている要因が指摘されています。

青森県の調査によると、稚貝を確保するための親貝が不足しており、2024年は必要量(1億4千万枚)の半分程度の7393万枚にとどまっています。

この親貝不足は、稚貝の生産量減少に直結し、将来的な水揚げ量の回復を難しくしています。

また、陸奥湾でホタテ養殖を行うイチヤマジュウ塩越商店の塩越さんにインタビューした記事では、「ホタテが生息できる海水温は24度までですが、陸奥湾では27度を超えるほどになってしまった」と述べられています。

この高温により、特に赤ちゃんホタテ(ラーバ)が死にやすく、2024年の水揚げ量は例年の4割程度に落ち込んだと報告されています。

水揚げ量の激減と価格高騰の実態

ホタテの大量死は水揚げ量に大きな影響を与えています。

青森県漁連によると、2025年4月の陸奥湾ホタテの水揚げ量は成貝と半成貝を合わせて696トンで、2024年の36.1%、2023年の13.2%にまで激減しました。

テレビ朝日の報道では、2023年が約5万トン、2024年が約3万トン、2025年は2万トンに届くかどうかで、「3年連続の不漁は危機的」とむつ湾漁業振興会の立石政男会長が語っています。

この品薄状態が落札価格の高騰を引き起こしています。

2025年5月9日の入札では、1kgあたり475円で落札され、3回連続で過去最高値を更新。

前回比90円増は過去最大の上げ幅です。

立石政男会長は「前回の385円も考えられない値段だったが、90円も上がった。高すぎると消費者が離れる心配がある」と懸念を表明しています。

対策と課題:深層部への移動とその限界

県や漁業者は高水温対策として、ホタテの養殖カゴを水温の低い深層部に沈める試みを行っています。

この方法は2023年の教訓を踏まえ、2024年に一定の効果を上げ、へい死率を前年(稚貝52.5%、新貝36.5%)から若干下げました(稚貝45.7%、新貝22%)。

しかし、深層部にはプランクトンが少なく、ホタテが十分な栄養を摂れず体力を蓄えられないため、死亡するケースも報告されています。

塩越さんはインタビューで、「海水温上昇や処理水問題でホタテ漁を辞める人もいる。

陸奥湾では他の魚介類の養殖が難しく、新しい道を開くのは難しい」と述べ、養殖の継続には新たな方法の模索が必要だとしています。

さいごに

陸奥湾のホタテ大量死は、記録的な高水温と親貝不足が主な原因で、水揚げ量の激減と価格高騰を引き起こしています。

漁師や加工業者は危機的状況に直面し、深層部へのカゴ移動などの対策も限定的な効果にとどまっています。

この問題は、気候変動や海洋環境の変化が地域経済に与える影響を浮き彫りにしており、持続可能な養殖技術や新たな販路の開拓が急務です。

青森県のホタテ産業がこの難局を乗り越え、安定した生産を取り戻せるよう、関係者の努力と支援が期待されます。

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