はじめに
『鬼滅の刃』がすごい人気ですね。
実は、ジャンプで連載が開始したとき、たまたま行きつけのラーメン屋さんで、連載第一回の『鬼滅の刃』を読みました。
そのとき「あ、あの漫画と雰囲気、似てない?」と感じたんです。
あくまでも、個人的な感想ですが、その『鬼滅の刃』と雰囲気が似ていると感じた漫画についてご紹介します。

『鬼滅の刃』と雰囲気が似ている漫画とは
そのとき、「『鬼滅の刃』と雰囲気が似ている」と感じた漫画とは、
高橋留美子『人魚シリーズ』
です。ご存じでしょうか?
絵の雰囲気や、民話的な物語設定、「不老不死」を感じさせるテーマ(「鬼」と「人魚」)。
『人魚シリーズ』はずいぶん昔の作品です。いまの若い方はご存じないかも知れませんので、簡単にご紹介したいと思います。
高橋留美子『人魚シリーズ』とは
1984年から1994年までの間で「週刊少年サンデー」「週刊少年サンデー創刊号」で不定期に掲載された作品です。
人魚の肉を食べて不老不死となった湧太と真魚の2人が、旅するなかで「永遠に生きることの苦悩」「不老不死を求める人間の愚かさ」と葛藤する物語です。
- 人魚は笑わない
- 闘魚の里
- 人魚の森
- 夢の終わり
- 約束の明日
- 人魚の傷
- 舎利姫
- 夜叉の瞳
- 最後の貌
の9編からなる作品となっています。
『人魚シリーズ』のあらすじ
主人公の湧太は、漁師でした。ある日、漁師仲間が拾ってきた奇妙な肉を「これが人魚の肉ではないか」「人魚の肉は不老長寿の妙薬だ」と、面白半分でたべてしまいました。
まさに、それが「人魚の肉」だったのです。
そこから湧太は年を取らなくなり、若者の姿のまま500年以上も生きることになるのです。
この作品の設定の面白さは、この「人魚の肉」は非常に毒性が強く、それを食べたとしても「不老不死」になれる者はごくわずかで、「不老不死」になれなかった者は死ぬか、化け物になってしまうのです。
不老不死となった湧太は、親しい人たちはみな死に絶え、孤独な時間を生きなければならない運命を背負います。やがて、湧太は元の人間に戻ることを望むようになります。
湧太は、元の人間に戻るためには「人魚に会えばなんとかなる」と聞き、人魚を探す旅に出ます。
ある日、人魚の里という場所で、湧太は真魚という少女に出会います。この少女も人魚の肉を食べさせられて不老不死になった者だったのです。
不老不死の湧太と真魚が、ともに永遠の時間を旅する物語がはじまるのです。
『人魚シリーズ』は高橋留美子のターニングポイントだった
高橋留美子さんと言えば、『うる星やつら』『めぞん一刻』『らんま1/2』『犬夜叉』『境界のRINNE』など、多くの人気作品を生み出したことで知られています。
コミックスの累計発行部数は2億冊を超える、数少ない漫画家の一人です。
多くの賞も受賞しており、2019年にはフランスの「アングレーム国際漫画祭グランプリ」、2020年には紫綬褒章を受賞するなど、現在の漫画界の第一人者の一人です。
「時をこえて生きる、生死をこえる」というモチーフは、後の「犬夜叉」や「MAO」といった作品に引き継がれていきます。
『うる星やつら』や『めぞん一刻』が大ヒットしている同時期に、このシリアスな「人魚シリーズ」が描かれたことで、高橋留美子という漫画家の表現の広さが読者に広まり、幅広い世代や性別に読まれるようになったという意味では、重要なターニングポイントになる作品だったと言えるでしょう。
『人魚シリーズ』は、その後もOVAや小説、テレビアニメなども制作され、高橋留美子さんのコアなファンの大事な作品となっています。

さいごに
『鬼滅の刃』を初めて読んだときに感じたのは、あくまでも個人的な感想で、なんの根拠もありません。あしからず。
ネットで調べてみても、『鬼滅の刃』の作者の吾峠呼世晴さんが高橋留美子さんのアシスタントをしていた、というような事実もないようです。
でも、『鬼滅の刃』の絵柄が、高橋留美子作品に似ている、という意見はちらほら見えました。同じように感じた方も多かったのではないでしょうか。
いずれにせよ、『鬼滅の刃』の吾峠呼世晴さんも『人魚シリーズ』の高橋留美子さんも、独特の作品世界を拓いて多くの読者を惹きつけているという点では、どちらも無双ですね。
これからもお二人の作品には注目していきたいと思います。