企業のウェブサイトやメールアドレスに欠かせないドメインですが、キャンペーン終了や事業縮小などで使わなくなったドメインを放棄する際、思わぬリスクが潜んでいることをご存知でしょうか。
期限切れドメインが第三者に取得され、悪用されるケースが増加しており、企業のブランドや顧客の信頼に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
この記事では、ドメイン放棄によるリスク、実際の悪用事例、そして安全な管理方法について詳しく解説します。
この記事のまとめ
- ドメイン放棄により、第三者がドメインを取得し、フィッシング詐欺やブランド毀損などのリスクが生じる。
- 過去には、自治体や企業の期限切れドメインがオンラインカジノや詐欺サイトに悪用された事例が報告されている。
- 安全なドメイン管理には、更新期限の管理、ドメインプロテクションサービス、不要ドメインの凍結が有効。
- 企業はドメインを資産として捉え、適切な管理体制を構築することが重要。

企業のドメイン放棄が引き起こすリスクは?
企業がドメインを放棄すると、そのドメインは一定期間後に誰でも再登録可能な状態になります。
この状況が引き起こす主なリスクは以下の通りです。
まず、ブランド毀損の危険があります。放棄したドメインが第三者に取得され、企業とは無関係なコンテンツ(例:不適切な広告や詐欺サイト)に使用されると、企業の信頼性が損なわれます。
たとえば、以前のブランド名を冠したドメインが悪質なサイトに転用されると、顧客が誤ってアクセスし、企業のイメージが傷つく可能性があります。
次に、サイバー犯罪のリスクです。放棄されたドメインは、フィッシング詐欺やマルウェア配布のプラットフォームとして悪用されることがあります。
サイバー犯罪者が企業の古いドメインを利用して、顧客や従業員を装ったメールを送信し、個人情報を盗むケースが報告されています。
研究者のゲーバー・サットマリーさんは、「放棄されたドメインを使って、企業に関連する個人情報を取得する手口が増えている」と警告しています。
さらに、SEO(検索エンジン最適化)の悪影響も無視できません。
過去に企業が使用していたドメインには、検索エンジンでの評価が蓄積されている場合があります。
これが悪用され、悪質なサイトが検索上位に表示されると、正規の企業サイトの評価に悪影響を及ぼす可能性があります。

期限切れドメインの悪用事例
期限切れドメインの悪用は、実際に多くの企業や公的機関で問題となっています。
以下に具体的な事例を紹介します。
自治体のドメイン悪用事例
2023年11月のNHKニュース7で、コロナ禍中に取得された地方自治体のドメインが期限切れ後にオークションで高値売買され、オンラインカジノや詐欺サイトに転用されたケースが報じられました。
たとえば、島根県が使用していたドメインが第三者に取得され、不適切なコンテンツに利用された事例が話題になりました。
これにより、自治体の信頼性が損なわれ、住民が詐欺サイトに誘導されるリスクが生じました。
「ドコモ口座」ドメイン失効事件
2020年にNTTドコモの「ドコモ口座」関連のドメインが失効し、第三者に取得された事例があります。
このドメインが詐欺サイトに悪用され、顧客がフィッシング詐欺の被害に遭う可能性が指摘されました。
この事件は、企業がドメイン管理の重要性を軽視した結果として注目されました。
企業のキャンペーンドメインの悪用
キャンペーン用に一時的に取得したドメインが、キャンペーン終了後に放棄され、第三者によってフィッシングサイトやスパムメールの送信元として悪用されたケースも報告されています。
これにより、企業は顧客からの信頼を失い、法的問題に発展するリスクも抱えました。

安全なドメイン管理方法
ドメイン放棄によるリスクを防ぐためには、以下の管理方法を導入することが推奨されます。
更新期限の徹底管理
ドメインの更新期限を逃さないよう、専任の担当者や管理システムを導入しましょう。
複数ドメインを管理する場合は、ドメイン管理事業者を利用して一元管理を行うと効率的です。
また、自動更新通知サービスを利用することで、期限切れを防ぐことができます。
ドメインプロテクションサービスの利用
ドメインプロテクションサービスは、ドメインの不正取得やハイジャックを防ぐためのセキュリティ機能です。
たとえば、「お名前.com」の「あんしん廃止」サービスは、ドメイン放棄後に第三者が取得できないよう一定期間凍結する仕組みを提供しています。
不要ドメインの凍結または戦略的維持
不要になったドメインは、完全に放棄する前に凍結(登録のロック)することを検討しましょう。
また、重要なブランドに関連するドメインは、コストがかかっても維持することで、悪用を防ぐことができます。
ドメイン管理の専門事業者への委託
大規模な企業では、ドメイン管理を専門事業者に委託することで、リスクを最小限に抑えられます。
日本レジストリサービス(JPRS)の渡邊千裕さんは、「ドメインはインターネット上の住所であり、適切な管理が企業の信頼を守る」と強調しています。

さいごに
企業のドメイン放棄は、ブランド毀損、サイバー犯罪、SEO悪影響といった重大なリスクを伴います。
自治体や「ドコモ口座」の事例からも、期限切れドメインの悪用が現実的な脅威であることがわかります。
企業はドメインを重要な資産と捉え、更新管理の徹底やプロテクションサービスの活用、専門事業者への委託を通じて安全な管理を心がけるべきです。
これにより、顧客の信頼を守り、企業のオンラインでの存在感を維持することができるでしょう。
ドメイン管理を見直し、未来のリスクに備えましょう!
