近年、学校の調理実習で起きた事故が注目を集めています。特に、福岡県北九州市の本城中学校で発生した事件は、ピザの生地に過剰な食塩が入っていたことが原因で複数の生徒が体調不良を訴え、病院に搬送される事態となりました。この記事では、事件の詳細と原因、学校側の対応などを基に、なぜこのようなミスが起きたのかを解説します。
この記事のまとめ
- 2026年1月23日、北九州市八幡西区の本城中学校で家庭科の調理実習中にピザを食べた3年生8人が体調不良を訴え、6人が病院に搬送されました。
- 原因はピザ生地に規定量以上の食塩が入っていたことで、北九州市教育委員会が2月10日に明らかにしました。
- 生地はピザの発酵時間を考慮した「リレー方式」で、1コマ前の別クラス生徒が作ったものを次のクラスが使用していました。
- 問題の生地を作った生徒数人が「少しくらい多くても大丈夫だろう」と目分量で食塩を多めに入れていました。
- 被害を受けた生徒たちは「ピザがとても塩辛かった」と証言し、医師の見解でも塩分過多による一時的なナトリウム過多の可能性が指摘されています。
- 市教育委員会は安全管理体制の研修を実施するなど、再発防止に取り組む方針です。
リレー方式の調理実習とは何か
本城中学校の家庭科調理実習では、ピザ生地の発酵に時間がかかるため、特別な方法が採用されていました。それは「リレー方式」と呼ばれるもので、1コマ前のクラスが生地を作り、次のクラスの生徒がそれを使って成形・焼成・試食を行うというものです。この方式は時間効率を重視した学校現場ではよく見られる工夫です。しかし、この仕組みが今回の事故の大きな要因となりました。
通常、調理実習では自分のクラスで一連の工程を完結させるのが基本ですが、発酵が必要なレシピの場合、授業時間を有効に使うために前のクラスが準備した材料を引き継ぐことがあります。北九州市教育委員会の調査によると、このリレー方式が採用された背景には、まさにピザ生地の特性がありました。生地を一から作ると発酵待ちで授業が終わってしまうため、前のクラスが練り上げた生地を冷蔵保存し、次のクラスに渡す形を取っていたのです。
この方式自体は合理的ですが、前のクラスの作業内容を次のクラスが直接確認しにくいという盲点がありました。生地の味見や塩分量のチェックが十分に行われなかった可能性が高いです。
規定量以上の食塩が入った具体的な原因
北九州市教育委員会が2月10日に発表した内容によると、ピザの生地に規定量以上の食塩が入っていたことが体調不良の直接的な原因とみられています。問題の生地を作った生徒数人が、レシピ通りの量を守らずに食塩を多めに入れていたのです。
聞き取り調査で、生徒たちは「少しくらい多くても大丈夫だろう」と答え、目分量で塩を追加したことが明らかになりました。レシピではおそらく「塩3つまみ」などと記載されていたとみられ、一部の報道では「塩3つまみ」の意味を正しく理解できていなかった生徒が不注意で多く入れた可能性が指摘されています。
中学生にとって「つまみ」という単位は曖昧で、指の大きさや力加減によって量が大きく変わります。家庭科の授業では計量スプーンを使うことを指導しますが、時間に追われて目分量になってしまったのでしょう。この「少しくらい多くても」という軽い判断が、結果として深刻な事態を招きました。
生徒たちの体調不良と病院搬送の経緯
2026年1月23日午後、本城中学校の3年生のクラスでピザを試食したところ、8人が吐き気や気分不良を訴えました。そのうち6人が救急車で病院に搬送されました。搬送された生徒はいずれも軽症で、当日または経過観察ののちに異常なしで帰宅しています。
生徒たちは口々に「ピザがとても塩辛かった」「しょっぱい」と証言していました。また、1人の生徒の尿検査では高濃度の塩分が検出され、塩分過多が裏付けられました。医師の意見としても「塩分摂取により一時的にナトリウム過多となり、体調不良を引き起こした可能性は否定できない」との見解が出されています。
このような急性の塩分過剰摂取は、通常の食事では稀ですが、調理実習のように一気に大量の塩が入った食品を摂取すると起こり得ます。特に成長期の中学生は体が敏感で、影響が出やすかったと考えられます。
学校と教育委員会の衛生管理の盲点
今回の事件で浮き彫りになったのは、学校側の衛生管理や安全確認の仕組みの不十分さです。リレー方式を採用する以上、前のクラスの作業を次のクラスが検証する手順が必要でしたが、それが欠けていたようです。
生地を受け取ったクラスで味見や匂いチェックを徹底していれば、異常に早く気づけた可能性があります。しかし、授業の進行を優先するあまり、こうした確認が疎かになったと推測されます。また、教師の指導体制も問題視されており、複数の生徒が同時にミスを犯した背景には、クラス全体の注意喚起が足りなかった点が挙げられます。
北九州市教育委員会は事件を受け、安全管理体制の見直しを表明しています。具体的に、調理実習時の研修を強化し、再発防止策を講じる方針です。これにより、他の学校でも同様のリスクを減らすきっかけになるでしょう。
さいごに
中学生の調理実習で起きたこの事件は、単なる生徒のミスではなく、学校の運用方法や指導のあり方を問い直すものです。リレー方式の利便性と安全性のバランス、計量の厳密さ、確認プロセスの重要性を改めて認識する必要があります。生徒たちが楽しく学べる場であるべき家庭科が、危険を伴うものになってはなりません。今後、教育現場全体でより丁寧な安全管理が進められることを願います。

