夏の風物詩として人気のシャインマスカットですが、その栽培権をめぐる問題が農業界で大きな議論を呼んでいます。
特に、種子法廃止の影響が農家の存続を脅かしていると言われています。
この記事では、シャインマスカットの栽培権の基本から、種子法廃止による危機、そして具体的な対策までを詳しく解説します。
農業に携わる方や、食の安全に関心のある方に役立つ情報を提供します。
この記事のまとめ
- シャインマスカットの栽培権は、種苗法に基づく育成者権で、農研機構が開発した品種を保護する仕組みです。
- 問題点は、海外への無断流出と国内の不正増殖で、中国や韓国での産地化が進み、日本産の競争力が低下しています。
- 種子法廃止は公的種子事業の縮小を招き、民間依存を強め、農家の種子入手コスト増大と知的財産の脆弱化を招いています。
- 農家の危機として、価格下落、海外競合、法的リスクが挙げられ、持続可能な経営が難しくなっています。
- 未来の対策には、ライセンス供与の慎重運用、品種登録の強化、農家の協力体制構築が重要です。
シャインマスカット栽培権って何?何が問題になっているの?
シャインマスカットは、1980年代後半から約30年かけて農研機構が開発した高級ぶどう品種です。
この品種は、2006年に品種登録され、種苗法に基づく育成者権が発生しています。
栽培権とは、この育成者権に基づき、許可を得て栽培・増殖できる権利を指します。
具体的には、農家が農研機構や許可された業者から苗木を購入し、自家用に限って増殖する形です。
問題の核心は、無断増殖と海外流出です。
例えば、2021年に愛媛県の会社員がシャインマスカットの苗を挿し木で増やし、ネット販売目的で保管したとして、種苗法違反で書類送検されました。
これは、全国初の摘発事例で、育成者権の侵害として扱われました。
さらに深刻なのは、海外流出です。
2007年頃から中国に持ち込まれ、2020年時点で栽培面積は日本の30倍の53,000ヘクタールに達しています。
韓国でも苗木業者が拡大生産し、タイやベトナム市場で安価に販売されています。
これにより、日本産のブランド価値が損なわれ、ライセンス料換算で年間100億円の損失が発生しています。
改正種苗法(2021年施行)では、海外輸出の禁止と自家増殖の許諾制が導入されましたが、流出の根本原因は現地での品種登録不足でした。
シャインマスカットの親系統「安芸津21号」も保護対象外だったため、早期に流出が進みました。
農家側では、自家増殖が制限されることで、毎年新苗を購入する負担が増大しています。
最近の事例として、2025年9月、農水省がニュージーランドへの栽培権供与を検討したところ、山梨県が小泉進次郎農相に抗議しました。
これは、国内産地の輸出拡大を阻害する恐れがあるためです。
こうした動きは、栽培権の管理が国際的に複雑化していることを示しています。
インタビュー記事として、やまなし in depthで山梨県の跡部祐一さんが語っています。
跡部祐一さんは、「シャインマスカット・バブルはいつ終わるかわからない」と、競争激化の懸念を述べています。
また、JA岡山の記事で入野龍之助さんがシャインマスカットの魅力を語り、「見て美味しい、食べて美味しい」と生産者の想いを伝えています。
これらの問題は、単なる法的事項ではなく、農家の生活基盤を揺るがすものです。
次に、種子法廃止の影響を深掘りします。
種子法廃止の概要とシャインマスカットへの影響
種子法は、1952年に制定された法律で、主に米・麦・大豆などの主要穀物の種子を国や都道府県が安定供給する仕組みでした。
2018年に廃止され、民間参入を促進する目的でしたが、農業競争力強化支援法により、公的知見の民間譲渡が義務化されました。
シャインマスカットへの直接影響は、果樹分野の種苗保護が種苗法中心のため限定的ですが、間接的な危機を生んでいます。
廃止により、公的品種改良の予算が削減され、民間企業依存が高まりました。
これが、シャインマスカットのような新品種の開発・保護体制を弱体化させています。
例えば、東京大学大学院の鈴木宣弘教授は、「種子法廃止が自家増殖制限と連動し、企業依存を促進する」と指摘しています。
廃止後、自治体条例で補完する動きもありますが、全国統一の保護が難しくなりました。
農家への影響として、種子価格の高騰が懸念されます。
シャインマスカットの苗木は、すでに高額ですが、民間独占が進むとさらに負担が増えます。
元農林水産大臣の山田正彦さんは、講演で「海外流出を防ぐための刑事告訴で十分なのに、廃止が種の海外依存を招く」と警鐘を鳴らしています。
この廃止は、シャインマスカットの知的財産を守る基盤を揺るがせ、農家の長期経営を危うくしています。
種子法廃止が引き起こす農家の危機
種子法廃止は、農家の種子入手を不安定にし、シャインマスカット栽培の危機を増幅させています。
まず、コスト増大です。
公的供給が減少し、民間苗木の価格が上昇、1本あたり数千円かかるシャインマスカットの導入費用が跳ね上がります。
次に、海外競合の激化です。
中国産シャインマスカットが東南アジアで日本産の半額で売られ、輸出市場を奪われています。
これにより、国内価格も下落傾向にあり、2025年現在、1房700~800円で販売されるケースが増えています。
法的リスクも高まっています。
自家増殖の許諾制が厳格化され、違反摘発が増加、無断栽培で罰則が適用される事例が相次いでいます。
山梨県の跡部祐一さんは、インタビューで「ブドウ栽培には熱意と根気が必要で、一攫千金のような気持ちで始めるのはお勧めしません」と、競争の厳しさを語っています。
さらに、持続可能性の低下です。
公的支援の減少で品種改良が遅れ、気候変動への対応が難しくなります。
これらが連動し、農家の廃業を加速させています。
愛媛県のぶどう農家は、ブログで「競争が激化し、価格暴落で儲からない」と実情を吐露しています。
種子法廃止は、こうした危機の引き金となっています。
未来の対策:農家が生き残るための具体策
種子法廃止後の危機を乗り越えるため、農家は多角的な対策を講じる必要があります。
まず、ライセンス供与の慎重運用です。
農水省はニュージーランド供与を検討中ですが、産地保護を優先した条件付けが求められます。
次に、品種登録の強化です。
海外での早期登録と、親系統の保護を徹底し、流出を防ぎます。
農家の協力体制構築も重要です。
JAや地域団体を通じた情報共有と、共同販売で価格安定を図ります。
例えば、長野県中野市ではIoTを活用した栽培管理で収量を向上させています。
新品種導入も有効です。
山梨県の「サンシャインレッド」開発のように、多様なラインナップでリスク分散を。
鈴木宣弘教授は、「公共種苗の知見を民間に譲渡せず、農家中心の体制を維持すべき」と提言しています。
これらを組み合わせ、持続可能な農業を実現します。
さいごに
シャインマスカットの栽培権問題と種子法廃止は、農家の未来を左右する深刻な課題です。
しかし、適切な対策と協力により、克服可能です。
読者の皆さんが、この情報を活かし、農業の持続可能性を支えてくださることを願っています。
ご質問があれば、いつでもお知らせください。

