キョンの食用化はできないの?農作物被害とジビエ観光資源化の間で揺れる伊豆大島の課題とは?

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伊豆大島で特定外来生物「キョン」が大繁殖し、農作物被害や生態系への影響が深刻化しています。

東京都は年間約9億円を投じて駆除を進めますが、捕獲したキョンのほとんどは焼却処分されています。

一方で、キョンの食用化やジビエを通じた観光資源化の試みが注目を集めています。

しかし、根絶を目指す行政と新たな地域資源を模索する地元の間で、課題が浮き彫りになっています。

この記事では、キョンの食用化の可能性とその背景にある問題を詳しく探ります。

この記事のまとめ
  • キョンの食用化は、農作物被害の軽減や観光資源化を目指す動きとして注目されているが、行政は根絶を優先し、焼却処分を継続。
  • 伊豆大島では推定約1万9000頭のキョンが生息し、農作物被害は2021年に1200万円以上、希少植物の絶滅危機も進行。
  • 河原晴馬さんがキョンのジビエ化に挑戦し、クラウドファンディングで支援を集めるが、食用化には制約や反対意見も。
  • 行政と地元の間で、キョンの根絶と利活用のバランスが課題として浮上。

キョンの食用化は実現可能なのか?

キョンの食用化は、伊豆大島の農作物被害や生態系破壊の解決策として一部で期待されています。

キョンは中国や台湾原産のシカ科の動物で、原産地ではかつて高級食材として扱われていました。

しかし、伊豆大島では特定外来生物に指定され、駆除された約6000頭(2023年度)がすべて焼却処分されています。

東京都は食用化を検討せず、根絶を優先する方針です。

一方、19歳の猟師、河原晴馬さんがキョンのジビエ化に挑戦しています。

河原さんは2024年に「伊豆大島ジビエ」を開業し、クラウドファンディングで200万円以上の支援を集めました。

彼はキョン肉を「柔らかく香り豊かなジビエ」として地域の特産品に変え、観光や経済の活性化を目指しています。 河原さんは次のように語ります。

「自分が肉を作ってキョンの命を肉に変え、都市の人が食べる機会をつくることで、少なくとも燃やされるよりは誰かの血肉となり、あるいは特定外来生物の問題を知ってもらうことで未来につながる。」

しかし、食用化には制約があります。

特定外来生物の扱いには厳しい規制があり、ジビエとしての流通量は限られています。 また、食用化が根絶の意識を薄れさせると懸念する声も根強いです。

農作物被害の深刻さとキョンの影響

伊豆大島では、キョンによる農作物被害が大きな問題です。2021年の島内での被害額は1200万円を超え、特にニンジンやジャガイモなどの作物が食害されています。

農家の男性は「作物の葉が食われてしまっている」と訴え、ネットやビニールシートで対策を講じても、2024年の被害は50万円相当に上りました。

さらに、キョンは希少植物にも影響を及ぼします。

サクユリやコクランなど8種が絶滅の危機に瀕しており、生態系の破壊が進行しています。

推定生息数は2019年の約2万4000頭から2023年には約1万9000頭に減少しましたが、住民からは「減少の実感がない」との声が上がっています。

市街地でのキョン出没も増え、自動車との衝突事故が問題に。住民は「町中に出る。森はハンターがいるから、みんな町に出てしまう」と話し、駆除の難しさを指摘しています。

ジビエ観光資源化の可能性と課題

キョンのジビエ化は、観光資源としての可能性も秘めています。

河原さんはキョン肉の提供に加え、狩猟体験やジビエツアーを企画し、観光庁の「地域観光再発見事業」に採択されました。

彼のクラウドファンディングでは、キョン肉や狩猟体験をリターンとして提供し、公開24時間で目標金額を達成。

河原さんは、キョンを「島の新たな資源に変える」ことを目指しています。

千葉県では、キョン肉をふるさと納税の返礼品として活用する例もあります。

しかし、伊豆大島では行政の慎重な姿勢が障壁に。坂上長一町長は「食用化はいいと思うが、キョンがいなくなるのが原則」と強調し、観光資源化が根絶の妨げになることを警戒します。

また、ジビエ化には設備投資が必要です。河原さんは冷蔵設備や施設改装のためにクラウドファンディングを実施しましたが、プレハブ冷蔵室の導入には400万円が必要とされています。

こうした資金面の課題も、食用化の普及を難しくしています。

行政と地元の間で揺れるキョン対策

東京都はキョン根絶のため、年間9億円を投じて銃器や箱わなによる捕獲を強化。

2023年度の捕獲頭数は過去最多の6610頭でした。

しかし、島の地形やハンターのアクセス難が根絶を困難にしています。

坂上町長は「数十年かかる可能性もある」と長期的な課題を認めます。

一方、河原さんのような地元の取り組みは、キョンの命を無駄にせず、島の魅力を発信する試みとして注目されています。

しかし、行政の「焼却処分」方針と地元の「利活用」志向の間で、バランスを取ることが課題です。

Xの投稿でも、キョン対策の税金使用や食用化の賛否について議論が交わされており、意見の多様性が伺えます。

さいごに

キョンの食用化は、伊豆大島の農作物被害や生態系破壊の解決策として期待される一方、根絶を目指す行政の方針との間で揺れています。

河原晴馬さんのジビエ化の挑戦は、島の新たな可能性を示していますが、資金や規制、意識の違いが課題として残ります。

キョン問題は、環境保護と地域振興の両立を考える契機となるでしょう。

伊豆大島の未来をどう描くのか、住民や行政、若者の取り組みに注目が集まります。

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