羽田空港を舞台にした利益供与疑惑が、世間の注目を集めています。
中心人物として浮上したのは、元自民党幹事長・古賀誠氏の長男、古賀誠一郎氏です。
彼の行動やビジネス実態、そして疑惑の背景には何があるのでしょうか。
この記事では、公開情報をもとに、誠一郎氏の人物像と事件の全貌を詳しく解説します。
- 古賀誠一郎氏は、元自民党幹事長・古賀誠氏の長男で、コンサル会社「アネスト」の社長です。
- 羽田空港のマッサージチェア事業を巡り、日本空港ビルデングの子会社がアネストに約4億3000万円の利益供与を行ったと認定されました。
- 誠一郎氏は「金が払われていない」と恫喝するなど、強引な要求が報じられています。
- 東京国税局は、アネストの業務実態がないとして約1億円の所得隠しを指摘し、税務問題も浮上しています。
- 日本空港ビルデングの社長と会長が引責辞任し、信頼回復が課題となっています。
古賀誠一郎は何者?コンサル会社「アネスト」の実態
古賀誠一郎氏は、元自民党幹事長で運輸相を務めた古賀誠氏の長男で、52歳(2025年時点)です。
彼が社長を務めるコンサルティング会社「アネスト」(東京都)は、羽田空港のマッサージチェア(MC)事業や広告代理店契約を巡る利益供与疑惑の中心にあります。
アネストは2006年から日本空港ビルデングの子会社「ビッグウイング」とMC事業の契約を結び、業務を下請けに丸投げしながら売上の一部を「手数料」として受け取っていました。
週刊文春の取材によると、誠一郎氏は都内の高級賃貸マンション(家賃161万円~255万円)に住み、ロールスロイスで移動するなど、豪華な生活を送っているとされます。
また、過去には「衆議院議員 古賀誠 長男 古賀誠一郎」と名刺に記載し、父親の影響力を利用していたとの証言もあります。
ノンフィクション作家の森功さんは、「長男は親の七光りの典型」と述べ、20年前から空港関連のビジネスに関与していたと指摘しています。

羽田空港での利益供与疑惑の詳細
日本空港ビルデングの特別調査委員会は、2006年から2016年までの10年間で、アネストに対しMC事業を中心に約4億3000万円の利益供与が行われたと認定しました。
この取引は、誠一郎氏が当時の社長・鷹城勲氏にMC事業への協力を依頼した2006年に始まり、ビッグウイングがアネストに業務を委託する形で進みました。
しかし、実際の業務は埼玉県の健康機器販売会社がほぼ全て担い、アネストには実態がないとされました。
さらに、2016年の東京国税局の税務調査で、ビッグウイングがアネストに支払った約1億円が「寄付」と認定され、所得隠しを指摘されました。
国税局はアネストにも2019年2月期までの5年間で約9000万円の申告漏れを指摘し、約4000万円の追徴課税を課したとみられます。
調査後、横田信秋社長(当時)は別会社経由で支払いを継続し、2020年まで約2億円の利益供与が続いたと報じられています。
広告代理店契約でも不適切な取引が確認されており、アネストが相場の半額程度の「場所代」をビッグウイングに支払い、広告主から相場の10倍の掲示料を要求していたケースもあったとされます。

恫喝行為と強引な要求の実態
2021年6月、ビッグウイングがMC事業の委託先を変更したことでアネストへの支払いが停止すると、誠一郎氏はビッグウイング幹部に電話で「金が払われていない。何とかしろ」とどなり、強引に要求したと報じられています。
この報告を受けた横田社長(当時)は、「何か手はあるかね」と幹部にアイデアを求め、ダミー会社「?社」を介してアネストに資金を流す案が検討されました。
しかし、委託先が「ダミー会社を介してお金を流すことはできない」と拒否したため、この案は実現しませんでした。
誠一郎氏の要求はMC事業にとどまらず、2022年には実績不明のMC会社をビッグウイングに紹介し、業務委託を拡大するよう働きかけたとされます。
ビッグウイング幹部はこれを「長男側に金を流す会社」と受け止め、取引を継続したと報じられています。

古賀誠氏の関与と政治的影響力
古賀誠氏は1980年から2012年まで衆院議員を10期務め、運輸相や自民党幹事長を歴任した大物政治家です。
利益供与疑惑について、読売新聞の取材に対し、「息子の問題を重く受け止めるが、空港ビル社の会長や社長と会ったことはなく、関与していない」と述べています。
特別調査委員会も、空港ビル社が古賀氏や誠一郎氏に行政・政治的便宜を依頼した事実は確認されなかったと結論付けました。
しかし、横田社長(当時)は調査委員会に対し、「お父さまが偉い方だったので、関係を断ち切れなかった」と説明。
Xの投稿では、「古賀誠の威を借りて息子が恫喝していた」「既得権益を守るため動いていた」との批判が上がり、誠一郎氏が父親の影響力を背景にビジネスを展開していたとの見方が広がっています。

企業ガバナンスと辞任の背景
疑惑の発覚を受け、日本空港ビルデングの横田信秋社長と鷹城勲会長は2025年5月9日付で引責辞任しました。
調査委員会は、横田氏が利益供与を主導し、鷹城氏が容認・助長したと認定。長年続いた「強すぎるリーダーシップの組織風土」が問題の背景にあると指摘しました。
新社長に就任した田中一仁氏は記者会見で、「公共サービスを提供する会社としてあってはならない事案」と謝罪し、誠一郎氏との関係を断ち切り、損害賠償請求を検討する方針を示しました。

公共性の高い羽田空港での問題
羽田空港は日本最大の空港であり、公共性の高いインフラです。
このような場で不適切な取引が長期間続いたことは、国民の信頼を大きく損なう問題です。
国土交通省は2025年4月3日、空港ビル社に調査と報告を求め、事件の解明を促しました。
Xでは、「公共企業がなぜこんなことに」「メディアは深掘りしてほしい」との声が上がり、透明性とガバナンスの向上が求められています。

さいごに
古賀誠一郎氏を巡る羽田空港の利益供与疑惑は、単なる企業不祥事にとどまらず、政治と企業の癒着や公共インフラの信頼性に関わる重大な問題です。
誠一郎氏の恫喝行為やアネストの実態、税務問題は、父親の影響力を背景にしたビジネス手法への疑問を投げかけます。
日本空港ビルデングの新経営陣には、透明な運営と信頼回復に向けた具体的な行動が期待されます。
この事件が、日本の企業ガバナンスや政治的影響力のあり方を再考するきっかけとなることを願います。
