2025年4月、トルコ南東部のディヤルバクル県リジェ地区で、押収された大麻20トンが空き地で焼却され、住民約2万5000人がめまい、吐き気、幻覚などの健康被害を訴える騒動が発生しました。
この前代未聞の事件は、トルコ当局の薬物処理のずさんさと、住民の健康を軽視した対応が引き起こしたと批判されています。
なぜこのような事態に至ったのか、原因と背景を詳しく探ります。
- トルコ警察が押収した大麻20トンを公開焼却し、住民2万5000人が健康被害を受けた。
- 原因は、大麻の煙に含まれるTHCが空気中に拡散し、間接喫煙による中毒症状を引き起こしたこと。
- 当局の非専門的な焼却方法(ガソリン200リットル使用、村名「LICE」の文字作り)が問題を悪化させた。
- ディヤルバクルの薬物問題や環境汚染リスクが背景にあり、専門家は適切な薬物処理の必要性を指摘。
- インタビュー記事は見つからなかったが、住民の声や専門家の批判が事件の深刻さを浮き彫りに。
大麻焼却が引き起こした健康被害の原因
2025年4月18日、トルコ警察はディヤルバクル県リジェ地区の空き地で、2023~2024年の薬物取り締まりで押収した大麻20トンを焼却しました。
この大麻は、時価約100億リラ(約376億円)に相当し、226件の捜査で1941人を検挙した成果でした。
当局は捜査の成功を誇示するため、大麻の袋で村名「LICE」の文字を作り、ガソリン200リットルをかけて火をつけました。
しかし、焼却後、数日間、町全体が黒い煙で覆われ、住民約2万5000人がめまい、吐き気、浮遊感などの症状を訴え、一部は病院に搬送されました。
この健康被害の主な原因は、大麻の煙に含まれるテトラヒドロカンナビノール(THC)が空気中に拡散し、住民が意図せず吸い込んだことによる間接喫煙です。
イェシル・ユルドゥズ協会のヤフヤ・オジェル会長は、「公共場所で薬物を燃やすことは、間接喫煙と同様に深刻な中毒を誘発する」と指摘しています。
特に、子供や高齢者が病院に運ばれたケースが報告され、住民からは「大麻の匂いで数日間窓を開けられなかった」「子供が病気で病院に行った」との声が上がっています。

非専門的な焼却方法の問題点
トルコ当局の焼却方法は、専門家から「非専門的で容認できない」と強く批判されています。
ガソリン200リットルを使用し、大量の大麻を一気に燃やしたことで、THCやその他の有害物質が広範囲に拡散しました。
X上では、「燃やさずに無毒化できなかったのか」「高温処理なら麻薬成分が分解されたのでは」との意見が見られ、代替案の不在が問題視されています。
さらに、当局が「LICE」の文字を作り、焼却を公開パフォーマンスとして行ったことも批判の的です。
この行為は、薬物処理の安全性を無視し、住民の健康を危険にさらしたとされています。
ヤフヤ・オジェル会長は、「このような方法は中毒リスクを高める」と警告し、適切な焼却施設や無毒化技術の使用を求めています。

ディヤルバクルの薬物問題と地域背景
事件の舞台となったディヤルバクル県は、トルコ南東部のクルド人地域で、薬物密輸の「バルカンルート」の中継地として知られています。
アフガニスタンやイランからヨーロッパへ大麻やヘロインが運ばれる経路に位置し、麻薬犯罪が深刻です。 地元メディアによると、ディヤルバクルは大麻栽培に適した地形を持ち、PKK(クルディスタン労働者党)による麻薬取引も問題視されています。
この地域の薬物問題が、大量押収とそのずさんな処理に繋がった背景と考えられます。

環境汚染の懸念と今後の課題
大麻焼却は健康被害だけでなく、土壌や水源への汚染リスクも引き起こしました。
ウェブ情報によると、「麻薬成分が土に沁み込み、土壌汚染の恐れがある」と指摘されています。
Xでも「燃やすのだめ、水に溶かすのもだめ」と、適切な処理方法の難しさが議論されています。
ディヤルバクルの農業地帯への影響が懸念され、環境調査の必要性が叫ばれています。

さいごに
トルコ集団幻覚事件は、当局の無計画な大麻焼却が住民の健康と環境を脅かした痛ましい事例です。
健康被害の原因は、THCを含む煙の拡散と非専門的な処理方法にあり、ディヤルバクルの薬物問題が背景に潜んでいます。
適切な薬物処理技術の導入と、住民の安全を優先した政策が急務です。
この事件を教訓に、トルコ当局が再発防止策を講じることを願います。
