電通グループは、2025年12月期に海外事業の不振が深刻化し、巨額の損失を計上する事態となりました。特に、2025年10〜12月期にのれん減損損失として3101億円を追加で計上する方針を取締役会に付議したことが発表されました。これにより、同期の連結業績(国際会計基準)は最終赤字が従来予想の529億円からさらに拡大する見込みです。また、年間配当を無配とする案も同時に付議され、株主への還元が停止される衝撃的な状況となっています。海外買収を繰り返してきた戦略が裏目に出た結果であり、日本企業のグローバル展開の難しさを象徴する事例です。この記事では、その背景と原因を詳しく解説します。
この記事のまとめ
- 電通グループは2025年10〜12月期にのれん減損損失3101億円を計上し、海外買収した企業の業績不振が主因です。
- 2025年4〜6月期にも860億円の減損を計上しており、累積で巨額の損失が発生しています。
- 海外事業の統治不全やPMI(買収後統合)の不徹底が失敗の深層原因となっています。
- これにより2025年12月期の最終赤字が過去最大規模に拡大し、年間配当を無配とする方針です。
- 国内事業は堅調に推移している一方、海外依存の脱却を目指したM&A戦略が逆効果となりました。
- 2026年以降は減損の可能性が限定的とされ、再建に向けた構造改革が進められています。
海外買収失敗の主な原因とは
電通グループは2013年に英国の広告大手イージス・グループを約4000億円で買収したのを皮切りに、海外でM&Aを積極的に推進してきました。海外事業の拡大を目指した結果、100件を超える買収を行い、グローバルなプレゼンスを高めようとしました。しかし、これらの買収が業績に悪影響を及ぼすことになりました。
主な原因は、買収先企業の業績が想定を大幅に下回った点です。欧米を中心とした地域で成長が見込めず、市場環境の変化や競争激化が影響しました。特に、米州やEMEA(欧州・中東・アフリカ)地域での不振が顕著で、2025年12月期の通期見通し下方修正や成長率引き下げが減損の引き金となりました。また、為替変動(英ポンドに対する米ドル安など)も要因の一つとして挙げられています。
さらに、買収後の統合プロセス(PMI)が不徹底だったことが指摘されています。五十嵐博CEOは決算説明会で、「PMIの不徹底で、シナジーを発揮しきれなかった」と述べ、経営のリスク判断が甘かった点を正面から認めています。買収先の組織連携が遅れ、相乗効果が出にくくなった結果、のれん(買収時に支払ったプレミアム部分)の価値が急激に低下したのです。
のれん減損の仕組みと計上タイミング
のれんとは、企業買収時に支払った金額が対象企業の純資産を超える部分を指します。国際会計基準では、のれんは償却せず、毎年減損テストを行い、価値が低下した場合に一括で損失計上します。
電通グループの場合、2025年4〜6月期に米州とEMEA地域で860億円の減損を計上しました。さらに、2025年10〜12月期に追加で3101億円の減損を計上する方針です。これにより、海外事業の不振が一気に表面化した形です。会社側は、2026年以降はのれんの減損損失が発生する可能性が限定的と見込んでおり、これまでの「うみを出し切る」ための措置と位置づけています。
過去にも同様の事例があり、2024年12月期には欧米などで2101億円の減損を計上し、過去最大の1921億円の最終赤字となりました。連続した減損は、海外M&A戦略の持続可能性に疑問を投げかけています。
無配転落の衝撃と株主への影響
2025年12月期の年間配当を無配とする方針は、電通グループ史上初めてのことで、株主に大きな衝撃を与えました。従来は139円50銭の配当を実施していましたが、巨額赤字の見通しから中間・期末ともに見送りとなりました。これにより、配当収入に依存していた投資家や、株主である共同通信・時事通信などのメディア企業にも影響が及びます。
無配の背景には、財務体質の悪化を防ぎ、再建に注力する必要性があります。会社は構造改革を進め、海外で約3400人(海外従業員の約8%)の削減を決定しました。これにより、2027年12月期までに約520億円の運用コスト削減を目指しています。不採算市場の縮小や撤退も並行して進めており、海外事業の再構築が急務です。
国内事業の好調と今後の展望
一方で、国内事業はインターネット広告などのけん引により堅調に推移しています。2025年上半期では売上総利益や調整後営業利益が過去最高を更新するなど、好調さが際立っています。日本事業のオーガニック成長率は約4%と上方修正され、全体の足を引っ張らない基盤となっています。
今後、電通グループは海外事業の立て直しに注力します。五十嵐博社長の退任と、佐野傑氏の次期社長就任も決定しており、新体制での改革が期待されます。海外事業の一部売却検討の報道もあり、抜本的な見直しが進む可能性があります。
さいごに
電通グループの2025年に起きた3101億円ののれん減損と無配転落は、海外買収戦略の失敗がもたらした深刻な結果です。PMIの不徹底や統治不全が深層原因であり、日本企業がグローバル化を目指す上での教訓となります。国内の強みを活かしつつ、海外事業の再建に取り組む新体制の手腕が、今後の鍵となるでしょう。厳しい状況ですが、構造改革を通じて持続的な成長を取り戻すことを期待します。

