近年、広告業界を取り巻く環境が大きく変化する中で、電通グループは海外事業の不振による業績悪化に直面しています。そんな中、2026年2月13日に発表された人事で、中核事業会社である電通の佐野傑社長が電通グループの代表執行役社長 グローバルCEOに昇格することが明らかになりました。この昇格は、グループ全体の再建と変革を加速させる重要な転機です。佐野傑氏のこれまでのキャリアや考え方を振り返りながら、昇格の背景と今後の展望を探ります。
この記事のまとめ
- 佐野傑氏は1970年生まれ、東京大学経済学部卒で1992年に電通に入社し、長年営業部門で活躍してきました。
- 2024年1月から電通社長およびdentsu Japan CEOを務め、2025年からデピュティ・グローバルCOOを兼任しています。
- 2026年3月27日付で電通グループ社長に昇格し、五十嵐博社長が退任します。
- 昇格の背景には、海外事業不振による過去最大級の最終赤字と3期連続赤字があり、新体制で再建を目指します。
- 佐野氏は広告領域外の事業を拡大し、BX/DXコンサルティングを強化してきた実績を持ちます。
- 今後、グループは広告以外の収益源をさらに伸ばし、顧客の成長パートナーとして競争力を高めていく見込みです。
佐野傑のプロフィール
- 氏名:佐野傑(さの・たけし)
- 生年月日:1970年3月3日(2026年現在55歳)
- 出身地:神奈川県
- 学歴:東京大学経済学部卒業(1992年)
- 主な役職:電通グループ代表執行役社長 グローバルCEO(2026年3月27日付就任予定)、dentsu Japan CEO、株式会社電通取締役(継続予定)
- 入社年:1992年4月、株式会社電通入社
- 所有株式数:13,721株(発表時点)
佐野傑の経歴
佐野傑氏は1992年に東京大学経済学部を卒業後、すぐに電通に入社しました。入社後は主に営業部門に配属され、多様な業種のクライアントを担当しながらキャリアを積み重ねてきました。マーケティング部門からスタートし、営業/BP(ビジネスプロデュース)部門へ異動した後も、顧客企業の成長支援に注力してきました。
2010年代に入ると、営業局長やビジネスプロデュース局長を歴任し、組織内の変革を推進する立場を担うようになります。2021年1月には電通の執行役員に就任し、BX(ビジネストランスフォーメーション)やDX(デジタルトランスフォーメーション)、プロモーション、コマース領域などを統括しました。これにより、従来の広告中心から事業全体の変革支援へとシフトする基盤を築いています。
2022年からは電通ジャパンネットワーク(現dentsu Japan)の執行役員としても活動し、国内営業部門を管掌。2023年にはグローバル全体のBX CEOを兼務し、グループのビジネス変革をリードする役割を果たしました。
2024年1月にはdentsu Japan CEOおよび株式会社電通の代表取締役社長執行役員に就任しました。この時期に、広告領域以外の売上総利益が全体の約3〜4割を占めるまでに事業構造を転換させてきた点が注目されています。2025年1月からは電通グループの執行役としてデピュティ・グローバルCOOを兼任し、グローバルな視点での経営にも携わってきました。
こうしたキャリアを通じて、佐野氏は「広告の会社」という従来のイメージを超え、顧客のバリューチェーン全体を支援するパートナーへと電通を変革させてきたキーパーソンです。
電通グループ社長昇格の背景
2026年2月13日、電通グループは代表執行役の異動を発表しました。佐野傑氏が2026年3月27日の株主総会後の取締役会で、代表執行役社長 グローバルCEOに就任します。一方、五十嵐博社長(65)は退任します。この人事は、海外事業の不振が続く中で業績が悪化し、2025年12月期に過去最大となる最終赤字(約3276億円の見込み)を計上したことへの対応です。減損損失として約3100億円を計上し、配当も上場以来初めてゼロとする厳しい状況です。
佐野氏の昇格は、こうした危機を乗り越えるための新体制構築を目的としています。日経新聞によると、佐野氏はコンサルティング事業を育ててきた実績があり、広告以外の事業拡大と海外事業再建を急ぐ方針です。グループ全体として、競争力強化を図る狙いがあります。
昇格がもたらすインパクト
佐野傑氏の社長就任は、電通グループにとって大きな転換点です。従来型の広告ビジネスから脱却し、BX/DXコンサルティングを軸にした成長戦略をさらに加速させるでしょう。すでに国内では広告領域外の売上総利益が約4割を占めており、この比率をさらに高めていく可能性が高いです。
また、海外事業の再建が急務です。3期連続の赤字を背景に、グローバルでの構造改革を推進する佐野氏の手腕が試されます。営業出身でありながら、事業変革をリードしてきた経験が、グループ全体の立て直しに活かされるでしょう。
佐野傑氏のビジョンと未来展望
佐野氏はこれまでのインタビューで、電通の強みを「人の心を動かすプロ」の集団だと強調しています。例えば、日経BPのインタビューでは、広告だけでは顧客の成長に貢献しきれないケースが多いとし、事業戦略や組織変革まで支援できるパートナーになる必要性を語っています。
また、xtrend.nikkei.comの記事では「守らず、仕掛ける」姿勢を強調し、2026年の国内事業成長戦略として、戦略・コンサルティング・テクノロジー・データ・組織変革を柱に据えています。広告DNAがコンサル領域で生きるという点も断言しており、電通独自の差別化を図る考えです。
これらの発言から、今後の電通グループは顧客の真のパートナーとして、Integrated Growth Partnerを目指す方向性が明確です。AIの活用や組織文化の変革を進め、持続的な成長を実現していくでしょう。
さいごに
佐野傑氏の電通グループ社長昇格は、単なる人事ではなく、広告業界の未来を左右する出来事です。業績悪化という厳しい現実の中で、営業から変革リーダーへと成長してきた佐野氏が、グループをどのように導くのか注目されます。顧客企業の成長を本気で支えるパートナーとして進化を続ける電通グループの動向から、目が離せません。

