大阪・関西万博2025が2025年4月13日に開幕し、多様な文化や技術が集まる場として注目を集めています。
しかし、開幕直後からコスプレでの来場を巡る議論がSNS上で過熱し、炎上騒動に発展しました。
人気漫画『ダンジョン飯』のキャラクター・マルシルのコスプレで参加したコスプレイヤーの投稿がきっかけで、規約の解釈やモラル、二次創作の法的問題について賛否両論が巻き起こっています。
この記事では、炎上の理由とその背景を、公式規約や当事者の声、専門家の見解をもとに詳しく解説します。
- 大阪万博の公式規約では、コスプレは「持込禁止物に該当しない場合」に限り入場可能ですが、更衣室の不在や撮影ルールが曖昧で、モラルに委ねられています。
- コスプレ炎上の主な理由は、万博の場にふさわしくないとする「TPO問題」と、二次創作の著作権侵害を懸念する声の2つです。
- コスプレイヤーの鹿乃つのさんは、規約を守りコスプレを楽しんだと主張し、問題提起の機会と捉えています。
- コスプレ界隈の「暗黙のルール」や二次創作のグレーゾーンが議論され、世代間や価値観の違いが炎上を増幅させました。
- 今後、万博運営やコスプレ界隈は、明確なガイドラインとモラル意識の向上が求められています。
なぜ万博でのコスプレが炎上したのか?
大阪万博でのコスプレが炎上した理由は、主に2つの観点から議論されています。
1つ目は、万博という国際的な場の「TPO(時間・場所・場合)」にコスプレがふさわしくないとする意見です。
X上では、「万博はコスプレ会場ではない」「世界各国の文化を体験する場で、レイヤーの承認欲求を満たすのは違う」といった批判が寄せられました。
週刊女性PRIMEの記事では、こうした否定的な意見が多数を占めたと報じています。
2つ目は、二次創作としてのコスプレが著作権侵害にあたる可能性を指摘する声です。
コスプレは原作キャラクターを模倣するため、著作権法上はグレーゾーンに位置します。
あるXユーザーは、「版権元からコスを楽しむためにマルシルのコスプレが正式に許可されていない作品である『ダンジョン飯』のコスプレは、権利侵害の可能性がある」と主張しました。
この議論は、二次創作全体の保守を重視するコスプレ愛好者の間で特に強く、炎上を加速させました。
大阪万博のコスプレ規約とは?
大阪万博の公式サイトでは、コスプレについて以下のように定めています。
- 持込禁止物に該当しないものであれば、装着しての入場は可能。
- 会場内の公序良俗に反する服装や平穏を乱す行為は禁止。
- コスプレ・仮装のための着替え場所はなく、トイレでの着替えは禁止。
- 他の来場者に迷惑となる写真撮影行為は禁止。
- 顔全体を覆うマスクなどは、入場を断る場合がある。
この規約は、コスプレを明確に禁止していないものの、細かなルールが不足しているため、解釈に幅が生じています。
ITジャーナリストの篠原修司さんは、「規約を『空気を読んだ配慮』で解釈すると、『コスプレは禁止していないが推奨もしていない』と受け取られ、批判が生じた」と分析しています。
また、更衣室がないことやトイレでの着替え禁止が、コスプレ実践のハードルを上げ、モラルに委ねられる部分が多いことも議論の一因です。
コスプレイヤー・鹿乃つのさんの見解
炎上の当事者であるコスプレイヤーの鹿乃つのさんは、ENCOUNTのインタビューで次のように語っています。
「記事のせいでコスプレイヤーが大勢来場して、もっと規制が厳しくなるという意見もありましたが、もし厳しくなるのであれば、それはもとから必要だったこと。実際に私自身、規約の内容がかなり緩く、運営に危うさを感じる部分もありました。たまたま私が最初だったからいいものの、他のコスプレ参加者が何も知らずに問題を起こし、国際問題に発展していた可能性もある。」
鹿乃さんは、規約を確認し、ホテルで着替えてタクシーで会場入りするなど、マナーを徹底したと説明。
さらに、二次創作の著作権問題については、
「二次創作がグレーなものであることは分かっていますし、著作者からの訴えがあればその表現はやめるべき。ただ、それを制限する権利は著作者にしかない。他人があれこれ言うのは表現の自由の侵害です」
と主張し、問題提起の機会と捉えています。
コスプレ界隈のモラルと「因習村」の問題
コスプレ界隈には、イベント外でのコスプレや公共交通機関での移動を避けるといった「暗黙のルール」が存在します。
濱澤更紗さんはnoteで、「コスプレ界隈が『因習村』と呼ばれるほど、独自の掟に縛られている」と指摘。
過去には、私服がコスプレと誤解されネットで晒される事例もあったと述べています。
鹿乃さんの万博での行動は、こうした暗黙のルールを破ったと一部から批判され、炎上の一因となりました。
Xユーザーの投稿でも、「古のオタクは『コスプレした状態で公共交通機関を使うのはNG』を常識としている。
着替え場所がないならコスプレはNGと受け取る」との声があり、世代間の価値観の違いが浮き彫りになっています。
このモラル観の衝突が、議論をさらに複雑化させました。
二次創作のグレーゾーンと著作権問題
コスプレを含む二次創作は、著作権法上、原作者の許諾なく行うと侵害の可能性がありますが、親告罪であるため、権利者が訴えない限り黙認されるグレーゾーンです。
Yahoo!知恵袋では、「コスプレが許容されるのは、公式ライセンス衣装や自作の場合に限られるが、黙認されているのが実情」との回答が見られます。
しかし、万博のような公の場でのコスプレは、原作のイメージや権利者の意図を損なうリスクが指摘されました。
鹿乃さんの場合、『ダンジョン飯』の版権元がコスプレを明示的に許可していないため、「公式と誤認される恐れがある」との批判が上がりました。
一方で、ディズニーなど二次創作に寛容な権利者も存在し、作品ごとのガイドラインの違いが議論を複雑にしています。
世代間・価値観の違いが炎上を増幅
炎上の背景には、コスプレ文化の世代間ギャップも影響しています。
Togetterのまとめでは、ユーザーのまかべひろしさんが「若い人は二次創作のグレーゾーンを嫌い、白黒はっきりさせたがる」と考察。
これに対し、「グレーで曖昧にしておく方が良い」と考える古参オタクとの対立が議論を長引かせたと分析しています。
Xでも、「規約上問題なくても、場違いな行動はコスプレ界全体のイメージを下げる」との意見が散見されました。
さらに、鹿乃さんのその後の発言や、二次創作グッズの販売歴が掘り起こされ、批判が「コスプレそのもの」から「個人の態度」に移行する一面も見られました。
これが炎上の長期化を招いた一因です。
さいごに
大阪万博でのコスプレ炎上は、規約の曖昧さ、モラルの違い、二次創作のグレーゾーンが交錯した複雑な問題です。
鹿乃つのさんの行動は、万博の多様性を体現する一方で、コスプレ界隈の暗黙のルールや著作権問題を浮き彫りにしました。
今後、万博運営には明確なガイドラインの策定が、コスプレイヤーにはモラルとTPOを考慮した行動が求められます。
二次創作文化を守りつつ、国際的な場での表現をどうバランスさせるか、この議論が新たなルール作りのきっかけとなることを願います。