天下一品の「こってりスープ」は、多くのラーメンファンを魅了し、1971年の創業以来、全国に熱烈な支持者を増やしてきました。
しかし、2025年6月30日をもって、首都圏の10店舗が閉店するというニュースがSNSで大きな話題となり、ファンの間に「天一ロス」が広がっています。
なぜこのような閉店ラッシュが起きているのか、運営会社の対応やファンの声をもとに、その背景と疑問を詳しく解説します。
- 天下一品は2025年6月30日に東京、神奈川、埼玉の10店舗（渋谷店、新宿西口店、池袋西口店、田町店、目黒店、吉祥寺店、蒲田店、川崎店、大船店、大宮東口店）を閉店。
- 閉店理由は運営会社が明らかにしていないが、原価率の高さ、高額な家賃、現金決済の限界、フランチャイズ契約の影響が背景にあると推測される。
- SNSでは「#天一閉店」「#天一ロス」などのハッシュタグがトレンド入りし、ファンから悲しみや思い出を綴る声が多数。
- ラーメン業界全体の厳しい環境や、消費者ニーズの変化（健康志向やキャッシュレス対応）も影響している可能性。
- 閉店は一部フランチャイズ店舗に集中しており、ブランド全体の経営危機ではないとされる。
なぜ天下一品が閉店ラッシュに？考えられる理由
天下一品を運営する天一食品商事さんは、2025年5月15日にJ-CASTニュースの取材に対し、閉店理由について「回答を差し控える」としています。
公式な説明がないため、閉店の背景は推測に頼らざるを得ませんが、以下のような要因が考えられます。
原価率の高さが経営を圧迫
天下一品の代名詞である「こってりスープ」は、鶏ガラスープと野菜をじっくり煮込んだ独特の濃厚さが特徴です。
しかし、このスープは仕込みに時間と手間がかかり、原価率が高いとされています。
ネットメディアによると、原材料費や光熱費の上昇が続くなか、企業努力だけではコストを吸収しきれず、値上げを余儀なくされている状況が影響している可能性があります。
例えば、2023年2月1日に価格改定が行われ、こってりラーメン（並）が940円前後となり、ライスを付けると1,000円を超える価格設定は、消費者から「高くなった」との印象を与えているようです。
高額な家賃と都心部の立地
閉店対象の店舗（渋谷店、新宿西口店、池袋西口店など）は、都心や主要駅近くの一等地に位置しています。
これらの店舗は高い賃料が経営の負担となり、売上が鈍化すると赤字に転落しやすいと指摘されています。
ネットメディアの記事では、コロナ禍以降、オフィス街や観光客依存エリアでの人流が戻り切らない状況が、好立地の店舗にとって逆に足かせとなっていると分析されています。
現金決済の限界と消費者ニーズの変化
現代の消費者ニーズとして、キャッシュレス決済の普及が急速に進んでいますが、天下一品の多くの店舗は現金決済のみに対応しています。
ネットメディアによると、「キャッシュレスじゃないと店に入らない」という消費動向が明確になっており、若年層や訪日外国人観光客の需要を取りこぼしている可能性があるとされています。
Xの投稿でも、QRコード注文を導入しながら電子決済に対応しない店舗運営に対し、「店側の都合の改悪」と批判する声が見られます。
フランチャイズ契約の影響
SNSや一部報道では、閉店店舗が特定のフランチャイズ企業に集中しているとの見方が広がっています。
例えば、2024年6月に閉店した歌舞伎町店、恵比寿店、池袋東口店などは、同じフランチャイジー企業（アトラスアンドカンパニー）が運営していました。
Xの投稿でも、今回の閉店は「全部おんなじフランチャイズ会社系の店舗」との指摘があり、フランチャイズ契約や運営会社の経営判断が影響している可能性が議論されています。
具体的な契約内容やトラブルは不明ですが、2024年の閉店では一部店舗が「三田製麺所」などに業態変更した例もあり、フランチャイジーの戦略転換が背景にあるかもしれません。
ファンが抱く疑問とSNSでの反響
天下一品の閉店ラッシュは、Xを中心に大きな話題となり、「#天一閉店」や「#天一ロス」がトレンド入りしました。
ネットメディアによると、閉店告知の投稿は230万インプレッションを超え、ファンの間で「学生時代の思い出の味だった」「深夜にお世話になった」といった感情的な声が多数寄せられています。
以下のような疑問がファンから浮かんでいます。
「なぜ都心の人気店が閉まるのか？」
渋谷店や新宿西口店など、繁華街の店舗は多くのファンにとって「青春の味」や「深夜の定番」として親しまれてきました。
Xでは「まさかあの天一が…」と驚きや動揺を綴る投稿が目立ち、閉店理由の不透明さがファンの不安を増幅させています。
特に、閉店店舗が一等地にあることから、採算性が取れていたはずとの疑問が多く見られます。
「天下一品全体の経営は大丈夫か？」
一部のファンは、首都圏の3割近い店舗が閉店することで、ブランド全体の存続を心配しています。
しかし、ネットメディアによると、天一食品商事を含むグループの売上は2022年度で95億8,900万円、2023年4月期で115億3,700万円と回復基調にあり、致命的な経営不振ではないとされています。
閉店は一部フランチャイズ店舗に集中しており、直営店への影響は限定的と考えられます。
「他の店舗や代替手段はあるのか？」
閉店店舗の利用者は、代替となる近隣店舗やオンラインでの商品（例：冷凍ラーメン）の有無を気にする声も見られます。
公式サイトによると、首都圏にはまだ24店舗が残り、オンラインショップでの「こってり唐揚げ」販売など、ブランドの展開は続いています。
しかし、都心部の店舗が減ることでアクセスが不便になる懸念がファンから上がっています。
ラーメン業界全体の厳しい環境
天下一品の閉店ラッシュは、飲食業界全体の課題とも関連しています。
内閣府のデータによると、2023年度のラーメン店倒産は45件、休廃業・解散が29件と過去15年で最多を記録しました。
コロナ禍での客足減少や、原材料費・人件費の高騰、円安による輸入コストの上昇が業界を圧迫しています。
天下一品も、2023年2月の値上げで消費者物価指数の上昇に対応しましたが、客足減少を避けられなかった可能性があります。
また、消費者の健康志向の高まりや「つけ麺ブーム」へのシフトも影響しているとされます。
ネットメディアでは、こってりラーメンが「深夜に食べるには重い」との声や、競合他社（例：日高屋の420円中華そば）に比べ価格が高いとの指摘が紹介されています。
これらが、都心部での客層変化と重なり、閉店を後押しした可能性があります。
さいごに
天下一品の首都圏10店舗の閉店は、ファンにとって大きな衝撃を与えました。
原価率の高さや高額な家賃、現金決済の限界、フランチャイズ契約の影響など、複数の要因が絡み合っていると考えられますが、運営会社の沈黙により、ファンの疑問は完全には解消されていません。
それでも、天下一品は全国に209店舗を展開し、売上は回復傾向にあることから、ブランドの根強い人気は揺るがないでしょう。
閉店は一時的な撤退に過ぎないかもしれません。
ファンとしては、残る店舗やオンラインでの商品を活用し、引き続き「こってり」の味を楽しみつつ、今後の展開に注目したいところです。
