はじめに
NHK大河ドラマ『新撰組!』『真田丸』『鎌倉殿の13人』や、フジテレビのドラマ『古畑任三郎』『王様のレストラン』などの脚本で知られる三谷幸喜さん。
新しい作品が発表されるたびに、話題になる脚本家の一人ですね。
2022年の『鎌倉殿の13人』の大ヒットは記憶に新しいですよね。
ところで、実はこの三谷幸喜さんの知る人ぞ知る期待の新作舞台(の噂?)が2024年に公演されるかも知れない、という話があるのをご存じでしょうか?
今回は、三谷幸喜さんの古くからのファンの間ではすでによく知られている、ある新作についてお伝えしたいと思います。
「東京サンシャインボーイズ」について
よく知られていることですが、三谷幸喜さんはもともと「東京サンシャインボーイズ」という劇団を主宰していました。
『十二人の優しい日本人』『ショウ・マスト・ゴー・オン~幕をおろすな』『ラヂオの時間』『彦馬がゆく』など、日本に「シチュエーションコメディ」を浸透させた伝説的な劇団として知られています。
いくつの作品かは何度も再演され、映画にもなっているので劇団を知らなくても作品のタイトルは聞いたことがある方は多いでしょう。
また、劇団からは、西村まさ彦さん、梶原善さん、かっこ相島一之さん、阿南健治さん、小林隆さん、近藤芳正さん、宮地雅子さん、甲本雅裕さん、野中功さんら、現在、テレビや映画などで活躍する多くの名バイプレイヤーを輩出しました。
活動期間は1983年~1994年の約10年ほどで、1994年の『東京サンシャインボーイズの「罠」』を最後に30年間の充電期間に突入しました。
そして、その充電期間が終わるのが2024年。そうです。その年にこそ東京サンシャインボーイズが帰ってくるのではないかと、古くからのファンの間では噂になっているのです。
三谷幸喜の知られざる期待の新作とは?
さて、ここに一冊のパンフレットがあります。東京サンシャインボーイズの最後の公演『東京サンシャインボーイズの罠』のパンフレットです。僕が1994年に新宿の「シアタートップス」で観劇したときに購入したものです。
このパンフレットには30年の充電期間に入る直前の東京サンシャインボーイズの劇団員たちのポートレートや、これまでの公演記録が掲載されていました。
それにしても、僕もよくとっておいたものです。
それもそのはず。このパンフレットにこそ東京サンシャインボーイズの30年後の新作(つまり、脚本家・三谷幸喜さんの新作)の予告が掲載されていたのですから。
それが、これ。パンフレットの裏表紙をご覧ください。
そうです。これが、1994年に予告された「東京サンシャインボーイズ」の最新作、
『リア玉』です。
ま、正確には「東京サンシャインボーイズ」ではなく「老境サンシャインボーイズ」ですがw
当時からのファンたちは、この『リア玉』は30年後に必ず講演される、と信じてきました。
かくいう僕もその一人です。だから、パンフレットも大事にとっておいたのですから。
ちなみに『リア玉』について、三谷幸喜さん自身はこのパンフレットの中でこう書いています。
「リア玉」 謎の球体リア玉をめぐる冒険活劇
今回の作品、「東京サンシャインボーイズの『罠』」のチラシに記載されている、今のところ最新の「COMING SOON」である。
もっとも30年後の上演を予定しているので、厳密に言うと「SOON」ではないような気もするが。
とりあえず、演出(山田和也)と主演(梶原 善)は決まっており、企画としてはかなり具体的なところまで進んでいる。しかし公演までかなりの期間があるので、まだまだ企画自体が変貌していく可能性はある。私自身、一つの話をそれだけ長い年月をかけて煮詰めたことがないので、はたしてどういうことになるか、見当がつかない。
ただし、活字になった文章には、責任を持つ方なので、内容的には、それほど大幅な変更はないことは約束しよう。これもまた面白い作品になることだけは確実である。
(『東京サンシャインボーイズの「罠」』パンフレットより)
三谷さんは「公演までかなりの期間がある」と書いていますが、気づいてみればもう目と鼻の先です。
出演はすでに還暦を迎えた、あるいは迎えつつある「東京サンシャインボーイズ」のオリジナルメンバーたちです。現在では、みなさん有名になった方ばかりですね。
ちなみに「演出」の山田和也さんは、「東京サンシャインボーイズ」の旗揚げからのメンバーで、『東京サンシャインボーイズの「罠」』の演出を手掛け、その後も三谷幸喜作品の『君となら~Nobody Else But You』、『巌流島』、『笑いの大学』などを演出し、2002年には菊田一夫演劇賞、2010年には毎日芸術賞を受賞するなど、現在は幅広いジャンルで活躍する演出家となっています。
個人的には、この山田和也さんこそ「脚本家・三谷幸喜の作品を、演出家・三谷幸喜以上に面白く演出できる演出家」だと思います。
大変残念なのは、オリジナルメンバーの伊藤俊人さんが2002年にくも膜下出血で急逝されたことです。「東京サンシャインボーイズ」に欠かせない役割をもった方でした。
また『リア玉』の公演が行われる予定だった劇場「シアタートップス」は2009年3月に閉館してしまいました。その際、閉館のイベントとして「東京サンシャインボーイズ」が15年ぶりに復活し『returns』という新作を披露しました。
『returns』では、亡くなった伊藤さんの生前の声が流れ、声の出演という形で仲間との共演が実現しました。
2024年の年末は東京サンシャインボーイズの伝説の作品の再演か?
実はこのパンフレットの裏表紙の予告編には、もう一つ注目すべき箇所があるんです。
それがこれです。
なんと、新作『リア玉』のわずか3ヵ月後に、『ブロードウェイの生活(2024年版)』の公演予告が!
この『ブロードウェイの生活』という作品は、実は新作ではなく初演1988年、再演1990と劇団で2回公演されている劇団の代表作品のひとつ。
若い芸人志望の人たちが、シャッターの閉まった夜の商店街で、会社帰りのサラリーマンに自分たちの芸を披露する、という話です。
『罠』kのパンフレットに掲載されている1988年の初演時のデータを観てみると、
西村まさ彦さんが、1人9役やってるw
で、ついでに1990年の再演のときはどうったかというと…
こちらは梶原善さんが1人14役ww しかも役の数が増えてるwww
もうこれだけで面白そうなので、是非2024年版を観てみたいものです。
ちなみに、三谷幸喜監督の映画『THE 有頂天ホテル』でSMAPの香取慎吾さんが演じた「歌を演じるベルボーイ」の役に起きた出来事は、この『ブロードウェイの生活』のアイデアが元になっているのではないか、と個人的には思っています。
この『ブロードウェイの生活(2024年版)』が年末に観られたら、それはそれは幸せな気分になれるような気がします。
SNSで待ちこがれているファンの声
SNSでは往年のファンのみなさんが『リア玉』の上演をいまかいまかと期待しながら待ち続けています。
みなさんの声が三谷幸喜さんに届いて、この公演が実現するといいなぁ!
【速報】三谷幸喜さん、伊丹十三賞を受賞。劇団復活の構想あり!
2023年9月1日、第15回伊丹十三賞贈呈式が東京・国際文化会館で開催され、受賞者の三谷幸喜さんが登壇。スピーチされました。
このスピーチの中で、三谷さんが『リア玉』にも触れておられます。
三谷さんは自身が主宰する劇団・東京サンシャインボーイズが充電期間に入ってから来年で30年になることに触れ、
「30年後にもう一度みんなで集まって『リア玉』をやると、半ば冗談で宣言してしまったのですが、何らかの形で実現できればいいなと考えています」
とお話されたとのこと。
これは、いよいよ『リア玉』上演の運びとなりそうですね。
期待大です!
DVDで観ることができる東京サンシャインボーイズの公演
ちなみに、東京サンシャインボーイズの舞台は現在、いくつかDVDが発売されていて、それでご覧になることができますので、ご紹介します。
『ラヂオの時間』(1993年公演)
『ラヂオの時間』は三谷幸喜監督で映画にもなったのでご存じの方も多いはず。
舞台版の『ラヂオの時間』は映画とはひと味もふた味も違う味わいで、演劇の面白さが詰まっています。きっとご覧になったかたは、映画とは全く違った感想を持つはず。
映画とはほとんど同じ内容ではあるものの、テンポやセリフまわしが独特です。何より、東京サンシャインボーイズの役者さんたちのクセのある演技が実に面白いです。
東京サンシャインボーイズ後期の名作中の名作で、これが映像として残っているのはファン冥利に尽きますね。
『ショウ・マスト・ゴー・オン~幕をおろすな』(1994年公演)
『ショウ・マスト・ゴー・オン』は、個人的には劇団の代表作と言っていいと思います。劇団の看板俳優だった西村雅彦さん(現・西村まさ彦さん)を強く印象付けた作品です。
「マクベス」を上演する舞台の舞台裏が舞台、というユニークな設定でした。
僕も1994年の公演を観ました。当時は、ほんとうに捧腹絶倒という感じで、後日テレビで放映したものをビデオに録画して、セリフを覚えてしまうくらい、何度も繰り返し観ましたよ。
実はこの作品は1992年にTVドラマにもなっていて、その中に登場するのは「東京シャンシャンボーイズ」という劇団で、上演しているのは「忠臣蔵」でした。
かなり面白いドラマでしたが、深夜だったこともあり平均視聴率は2.9%ほどだったとか。
幻のドラマです。FODなどで配信してもらえないものでしょうか…
『東京サンシャインボーイズの「罠」』(1994年公演)
このブログですでにご紹介した、充電期間に入る前の東京サンシャインボーイズ最後の公演です。
小学校時代の同級生の葬儀に集まった人々が、大人になって久々の再開でぎくしゃくする、という内容です。
実際の公演はWキャストで、エルサレムバージョンとオリエンタルバージョンとふたつのバージョンがありました。
さいごに
ここまでご紹介したとおり、2024年公演予定(?)の『リア玉』は、昔からの三谷幸喜ファン・東京サンシャインボーイズファンの間では、伝説のように語り継がれています。
当時、20代だった観客たちも30年後は50代。演じる方も老境なら、観る方もオッサンです。
でも、どこか青春時代がよみがえるように胸アツなのは「30年の充電期間」という言葉を信じて、30年後の新作を待ち続けているファンの純粋な気持ちです。
そういえば、新型コロナの影響で自粛期間にあった2020年5月に、YouTubeで東京サンシャインボーイズのメンバーによる『12人の優しい日本人』のリモートでの読み合わせが配信されました。
「読み合わせ」といっても、東京サンシャインボーイズのオリジナルメンバーを中心とした迫真の演技で、自粛で気持ちが沈んでいた人々に深い感動を与えたのは記憶に新しい出来事でした。演劇のちからを感じさせた企画でしたよね。
いまも三谷幸喜さんの新作舞台は発表され続けていますが、東京サンシャインボーイズの舞台はまたちょっと印象が違うのですよね。
個人的には、三谷幸喜さんの舞台を最も面白く演じられる集団こそが「東京サンシャインボーイズ」なのではないかと思っています。
是非、この30年後の新作を実現してほしいし、きっと「東京サンシャインボーイズ」は、あの頃の気分で、新作『リア玉』そして、再々演『ブロードウェイの生活』を実現してくれるものと信じています。
30年前に20代の胸アツ演劇青年を代表して。