NHKの連続テレビ小説「あんぱん」は、やなせたかしさんと小松暢さんをモデルにしたフィクション作品で、2025年3月31日から放送されています。
このドラマでは、主人公の朝田のぶ(今田美桜さん)と柳井嵩(北村匠海さん)が激動の時代を生き抜く姿が描かれ、特に戦争の影響が色濃く反映されています。
その中で、陸軍内務班における「かわいがり」という言葉が登場し、視聴者の注目を集めました。
この記事では、ドラマ「あんぱん」で描かれた「かわいがり」の実態と、その背後にある歴史的背景を詳しく探ります。
- 朝ドラ「あんぱん」では、陸軍内務班の「かわいがり」が新兵に対する暴力的な行為として描かれています。
- 「かわいがり」は、戦前の日本軍で新兵を鍛える名目で行われた体罰やリンチを指し、現代ではパワハラやいじめに相当します。
- やなせたかしさんをモデルにした嵩が、軍隊で過酷な「かわいがり」を経験した史実がドラマに反映されています。
- 戦前の軍隊文化では、上下関係の厳しさや暴力が常態化しており、これが戦後の自衛隊にも一部影響を与えました。
- ドラマの描写は、戦争の非人道性を伝え、現代の視聴者にその歴史を考えるきっかけを提供しています。
「かわいがり」とは何か?ドラマでの描写
朝ドラ「あんぱん」では、柳井嵩が徴兵され、陸軍内務班での生活が描かれます。
特に第11週「軍隊は大きらい、だけど」(2025年6月9日〜6月13日放送)で、嵩が新兵として「かわいがり」と呼ばれる過酷な扱いを受けるシーンが登場します。
この「かわいがり」は、上官や先輩兵による新兵への体罰やリンチを指し、ドラマでは顔の形が変わるほどのビンタや理不尽な暴力として表現されています。
この描写は、視聴者に強い衝撃を与え、X上でも「刺激が強すぎる」「戦争の凄惨な一面」と話題になりました。
ドラマでは、嵩が小倉連隊に入隊後、軍隊の厳しい上下関係の中で「かわいがり」に耐える姿が描かれます。
これは、モデルとなったやなせたかしさんが実際に経験した軍隊生活を基にしています。
やなせさんは自著「ぼくは戦争は大きらい」で、軍隊での過酷な体験を振り返っており、ドラマはこの史実を忠実に再現しているといえます。
歴史的背景:戦前日本軍の「かわいがり」文化
「かわいがり」という言葉は、戦前の日本軍において新兵を「鍛える」名目で使われた言葉ですが、実際には現代のパワーハラスメントやいじめに相当する行為でした。
Xの投稿では、「『かわいがり』はパワハラ・いじめに相当し、戦後の自衛隊でも『内務班文化』として残存した」と指摘されています。
この行為は、新兵の精神を鍛え、軍の規律を叩き込む目的で行われましたが、しばしば過度な暴力に発展しました。
やなせたかしさん自身も、小倉連隊で「顔の形が変わるぐらいのビンタ」を受けたことを明かしています。
これは、新兵が「軟弱」と見なされた場合に特に厳しく行われ、上下関係の絶対性を植え付ける手段でした。
やなせさんは当初、軍隊生活に適応できず「軟弱にして気迫に欠ける」と評価されましたが、後に全ての訓練を真面目に取り組むことで身体も鍛えられ、幹部候補生試験に合格するまでになりました。
戦前の日本軍では、こうした暴力が常態化しており、「内務班」と呼ばれる兵舎内での生活管理がその温床となっていました。
内務班は、兵士の日常生活を厳しく統制する場であり、上官や先輩兵による指導が名目で行われる体罰が横行しました。
Xの投稿では、「内務班のリンチに苦しんだ兵卒が、外地で残虐行為に加担する悲劇」と、軍隊の暴力が戦場での行動にも影響した可能性が指摘されています。
ドラマと史実のリンク:やなせたかしさんの体験
やなせたかしさんの軍隊体験は、朝ドラ「あんぱん」の重要なモチーフです。
やなせさんは1940年に小倉連隊に入隊し、過酷な訓練と「かわいがり」を経験しました。
ドラマでは、嵩が徴兵され、赤紙を受け取るシーン(第49回、2025年6月5日放送)から軍隊生活が始まり、理不尽な暴力に直面します。
やなせさんの自伝によれば、こうした体験は彼の戦争への嫌悪感を深め、後の「アンパンマン」の「逆転しない正義」というテーマに繋がったとされています。
やなせさんの軍隊生活は、ドラマの脚本家・中園ミホさんによって丁寧に描かれています。
プレジデントオンラインの記事では、田幸和歌子さんが「やなせたかし氏も軍隊へ。小倉連隊に入り、顔の形が変わるぐらいのビンタを受けていた」と述べており、ドラマが史実に基づいていることを裏付けています。
また、やなせさんが従軍中に紙芝居「双子の島」を制作したエピソードも、ドラマで嵩の芸術家としての側面を描く際に反映されています。
視聴者の反応と現代への影響
「あんぱん」の「かわいがり」シーンは、視聴者に大きな反響を呼びました。
Xでは、「日本軍の非人道性を描くのは重要だが、刺激が強すぎる」との意見や、「他国の軍と比較しても日本軍の暴力は際立っていた」との声が上がっています。
一方で、「戦争の凄惨な描写をマイルドにすべきではない」と、リアルな描写を支持する意見もあります。
この描写は、戦前の軍隊文化が現代の職場や組織に残した影響を考えるきっかけにもなっています。
戦後の自衛隊でも、かつての「内務班文化」の名残が問題視された時期があり、現代ではパワーハラスメント防止の観点から厳しく取り締まられています。
ドラマを通じて、過去の過ちを振り返り、現代社会での人間関係や指導のあり方を再考する声も見られます。
「かわいがり」に関するインタビュー
残念ながら、「かわいがり」に直接焦点を当てたインタビュー記事は現時点で見つかりませんでした。
ただし、ドラマ「あんぱん」のキャストインタビューでは、戦争シーンの撮影について言及があります。
例えば、北村匠海さんは戦争シーンに向けて3日間絶食し、飢えを体験したと明かしています。
これは、「かわいがり」を含む軍隊シーンのリアルさを追求した一例といえるでしょう。
また、脚本家の中園ミホさんは、ドラマの冒頭で「正義は逆転する」というやなせさんの言葉を強調したとインタビューで語っています。
この言葉は、「かわいがり」のような非人道的な行為が「正義」の名の下に行われたことへの批判とも繋がり、ドラマのテーマを深めています。
さいごに
朝ドラ「あんぱん」で描かれた陸軍内務班の「かわいがり」は、戦前の日本軍の過酷な実態を浮き彫りにする重要な要素です。
やなせたかしさんの体験を基にしたこの描写は、戦争の非人道性を伝え、現代の視聴者に歴史を振り返る機会を提供しています。
「かわいがり」は単なる暴力ではなく、軍隊文化や上下関係の歪みを象徴する行為であり、その背景を理解することで、過去の教訓を現代に活かすことができます。
ドラマを通じて、戦争の悲劇と人間の尊厳について考えるきっかけになれば幸いです。

