はじめに
RCEPに参加15カ国が署名した、というニュースが流れました。
TPP(環太平洋パートナーシップ協定)のときは、ずいぶん国会やマスコミでも騒がれましたが、今回はあまり話題になっていないようにも感じられます。
そもそもRCEPとは何なのでしょうか?
今回は、RCEPについて調べてみました。
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RCEPって何?読み方は?
RCEPは「アールセップ」と読みます。「Regional Comprehensive Economic Partnership」の略称で、日本では「東アジア地域包括的経済連携」と呼ばれています。
RCEPの加盟国は?
RCEPの加盟国はASEANの10カ国(ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム)に、日本、韓国、中国、オーストラリア、ニュージーランドの5カ国を加えた、計15ヵ国です。
当初はインドも加盟する想定でしたが、結局インドは離脱することになりました。
どんな経済連携が実現するの?
ASEANはすでに、日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランドの5カ国とFTA(自由貿易協定)を結んでおり、関税障壁の撤廃に動いていますが、このRCEPによって個別のFTAを包括的に束ねることで、広域的な経済連携を実現しようという構想になっています。
実現すれば、世界の人口、GDP、貿易額の3割を占める巨大な自由貿易圏となります。
この構想では、関税の自由化のみならず、サービス分野での規制緩和や投資障壁の除外が含まれています。それによって、例えば、参加国間の広範囲なサプライチェーンや、通関コストの大幅低減が実現することになります。
RCEPをインドが離脱した理由と影響は?
インドがRCEPを離脱したことによって、その影響力は大きく減退しました。
インド離脱の理由は、3つほどあると考えられます。
【理由1】インド経済の成長鈍化
インドは19年4月~6月期の実質成長率が5%に下がり、失業率も過去最悪となりました。政府は「自由貿易拡大によって農業などの自国産業が大きな打撃を受けるかも知れない」と考えたようです。
【理由2】市場開放による政治基盤への懸念
インドのモディ首相の与党は、景気減速のために19年10月末の州議会選挙で大きく議席を減らしました。政権基盤を維持するため、今回の参加を見合わせたのではないかと見られています。
【理由3】貿易赤字拡大への懸念
インドは人口約13億人の大国でありながら、1人あたりのGDPは他の参加国あわせた16カ国中14位という、産業競争力が大変低い状況です。
インドの貿易赤字の65%をRCEP参加国が占め、特に全体の4割が中国からの赤字となっています。交渉結果次第では、中国の電化製品やオーストラリアなどの農産物の流入によって赤字が膨らむおとを懸念したと思われます。
インド離脱の影響
インドが参加していれば、RCEPのGDPは2050年までに100兆ドルを越え、TPPの約2倍の規模に成長する可能性がありました。
ただし、今後の条件次第では、インドが改めて復帰する可能性はありそうです。
TPPとの違いは?
一番大きいのは参加国でしょう。
TPPは中国を除外し、結果的にアメリカも離脱。結果的に締約国は11カ国(オーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、日本、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、ベトナム)に止まっています。
RCEPはASEANに中国も含んだ、アジア中心の貿易協定の色合いが強くなっています。
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さいごに
RCEPが締結されたことで、中国を含むアジア中心の自由貿易圏が生まれたことになり、大統領選を終えたアメリカがどのような動きをするかが気になるところです。
アメリカと中国のイニシアティブが、RCEPによってどのようなバランスになるのか、今後も注意深く見守る必要があるでしょう。