インドの高校生3人組が、電気を必要としない冷蔵庫「サーマボルト」を発明し、世界的な環境賞「アース・プライズ2025」を受賞しました。

この革新的な技術は、電力供給が不安定な地域や災害時の救援、農村の医療現場での活用が期待されています。
この記事では、サーマボルトの仕組みや実用性、災害時の可能性について詳しく解説します。
- インドの高校生3人が開発した「サーマボルト」は、電気不要の冷蔵庫で、「アース・プライズ2025」を受賞しました。
- 「イオノカロリック冷却法」を利用し、塩化アンモニウムと水酸化バリウム八水和物で最大マイナス10℃まで冷却可能です。
- 電力供給が不安定な地域や災害時、医療現場での活用が期待されています。
- 実用化には、材料の確保や攪拌の労力、持続時間の課題が残ります。
サーマボルトの仕組み:電気不要でどうやって冷やす?
サーマボルトは、電気を使わずに冷却する「イオノカロリック冷却法」を採用しています。
この方法は、塩が水に溶ける際に熱を奪う化学反応を利用するものです。
具体的には、以下のプロセスで冷却を行います。
主要な材料と冷却プロセス
- 塩化アンモニウム:主な冷却剤で、水に溶ける際に水の温度を最大28度も下げます。
- 水酸化バリウム八水和物:塩化アンモニウムと組み合わせることで、冷却温度をマイナス10℃まで引き下げます。
- 使用方法:ユーザーはこれらの塩を銅製のボックスに入れ、水を加えます。その後、ジャイロスコープなどで攪拌することで化学反応を促し、冷却効果を生み出します。
この仕組みは、電気やコンプレッサーを使わないため、電力インフラがない地域でも使用可能です。
また、シンプルな操作で冷却できる点も特徴です。

実用性:サーマボルトはどれくらい使える?
サーマボルトの実用性については、以下のようなポイントが挙げられます。
メリット
- 電力不要:電気がない環境でも使用できるため、農村や貧困地域での食料保存やワクチン保管に適しています。
- 環境に優しい:電力消費がないため、CO2排出を削減し、環境負荷を低減します。
- 試作とテストの計画:開発者のドゥルブ・チャウダリーさん、ムリドゥル・ジェインさん、ミスラン・ラダニアさんは、賞金約170万円を活用して200台の試作機を製造し、120の病院で実地テストを行う予定です。これにより、実用性の検証が進められます。
課題
- 材料の確保:塩化アンモニウムや水酸化バリウム八水和物の入手性やコストが、普及の鍵となります。Xの投稿では、材料の輸送や持続可能性について疑問を呈する声もありました。
- 攪拌の労力:人力での攪拌が必要なため、ユーザーの負担が課題です。特に長時間の使用では、手間がかかる可能性があります。
- 冷却の持続時間:化学反応による冷却の持続時間は明らかではなく、連続使用時の効率も検証が必要です。Xのユーザーは、ガソリンや発電機を使った冷蔵庫と比較して、長期的なコストや効率で勝てるかの懸念を指摘しています。

災害時の活用可能性:どんな場面で役立つ?
サーマボルトは、特に災害時の救援や電力供給が不安定な地域での活用が期待されています。
災害時の具体的な活用シーン
- 食料や医薬品の保存:災害で電力が途絶えた場合でも、サーマボルトは食料やワクチン、医薬品を冷えた状態で保存可能です。Xの投稿では、「災害現場で使える」「日本の避難所でも重宝されそう」との声が上がっています。
- 医療現場での利用:農村の病院や移動診療所など、電力が不安定な場所でのワクチン保管に適しています。120の病院でのテスト計画も、この用途を意識したものです。
- 国際的なニーズ:Xのコメントでは、電気が通じる救護施設が整った日本とは異なり、インフラが脆弱な国での需要が高いと指摘されています。

災害時の課題
災害時には、材料の供給や攪拌のための人手が不足する可能性があります。
また、冷却の持続時間が短い場合、頻繁な材料の補充が必要となり、物流の混乱が課題になるかもしれません。
インドの高校生の発明が示す意義
この発明は、若い世代が環境問題や社会課題に取り組む姿勢を示しています。
ドゥルブ・チャウダリーさん、ムリドゥル・ジェインさん、ミスラン・ラダニアさんのチームは、科学的知識を活用し、貧困層や災害被災者への貢献を目指しました。
Xの投稿では、「すごい」「大発明」と称賛する声が多く、若者のイノベーションに感動する意見が目立ちます。
また、インドの他の電気不要冷蔵庫「ミティクール」(粘土と水の気化熱を利用)とも異なり、化学反応を用いたアプローチは新たな可能性を示しています。

さいごに
サーマボルトは、電気不要でマイナス10℃まで冷却できる画期的な冷蔵庫です。
電力がない地域や災害時での活用が期待される一方、材料の確保や攪拌の労力、持続時間の課題が残ります。
ドゥルブ・チャウダリーさん、ムリドゥル・ジェインさん、ミスラン・ラダニアさんの発明は、若者の創造力と社会貢献の精神を象徴しています。
今後の実地テストの結果や改良に注目しつつ、この技術が多くの人々の生活を支える未来を願います。