2025年3月、島根県の宍道湖で、漁師が「大きいサバ」と間違えた巨大な魚が捕獲されました。
それは、北米原産の外来種「シロチョウザメ」でした。宍道湖の食文化を代表する「宍道湖七珍」やその生態系に、シロチョウザメがどのような影響を与えるのか、気になった方も多いのではないでしょうか。
また、観賞魚飼育に伴う放流問題が、なぜ繰り返されるのかも気になるところです。
この記事では、シロチョウザメの出現をきっかけに、宍道湖の生態系と放流問題の実態に迫ります。
- シロチョウザメは宍道湖に自然分布しない外来種で、飼育放棄や放流が原因と推測されています。
- 宍道湖七珍を含む在来種への生態系影響は未解明ですが、外来種の定着は懸念されます。
- 観賞魚飼育の無責任な放流は、環境意識の低さや法規制の周知不足が背景にあります。
- 環境省は外来種問題に対し、規制や啓発活動を進めています。
- 個々の行動変容が、宍道湖の自然環境保護に重要です。
シロチョウザメが宍道湖七珍の生態系に与える影響
宍道湖で捕獲されたシロチョウザメは、体長約1メートルの大型魚で、2025年3月1日にフナの刺網漁で発見されました。
宍道湖自然館ゴビウスの寺岡誠二さんは、「北半球の冷たい場所に暮らしていて、シロチョウザメは北米あたりです。自然の分布ではないです」と述べ、宍道湖への自然移動はほぼ不可能としています。
では、シロチョウザメが宍道湖七珍(スズキ、モロゲエビ、ウナギ、アマサギ、シラウオ、コイ、シジミ)やその生態系にどのような影響を与えるのでしょうか。
環境省によると、外来種は在来種の捕食、生息場所の奪取、交雑による遺伝子汚染などを通じて生態系に悪影響を及ぼす可能性があります。
シロチョウザメは穏やかな性格で、直接的な捕食の影響は少ないとされますが、寺岡誠二さんは「多少こぶがあったりとか、人に飼われたような感じもします」と、飼育されていた個体の可能性を指摘しています。
Xの投稿でも、「外来種の定着は在来種や生態系への影響が懸念されますね」との声が上がっており、シラウオなど漁獲量が減少中の宍道湖七珍への影響を心配する意見が見られます。
具体的な影響はまだ研究段階ですが、過去の事例では、外来魚オオクチバスの駆除後にアメリカザリガニが大量発生し、水生植物が消失したケースが報告されています。
シロチョウザメが宍道湖に定着した場合、食物連鎖や資源競合を通じて、宍道湖七珍の生息環境に変化が生じる可能性は否定できません。
観賞魚飼育の放流問題が起きる理由
シロチョウザメの出現は、観賞魚飼育に伴う放流問題を浮き彫りにしました。
ゴビウスの寺岡誠二さんは、シロチョウザメが「すぐにエサを食べたことなどから、飼育されていた個体である可能性が高い」と推測し、放流の可能性に言及しています。
Xでも「飼育放棄だろうな」「捨て魚ダメ、ぜったい」と、放流への批判が目立ちます。
環境省によると、外来種問題の一因は、ペットや観賞魚の無責任な放棄です。
石川県のウェブサイトでは、「一部の外来種は生態系のバランスを崩し、生物多様性を脅かす」と警告されています。
シロチョウザメは幼魚が観賞魚として流通しており、成長して飼育が困難になると放流されるケースが考えられます。
背景には、飼育者の環境意識の低さや、外来生物法(特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律)の周知不足があります。
放流問題への対策と現状
環境省は、外来種の規制や防除、理解促進に取り組んでいます。
外来生物法では、特定外来生物の飼育や移動が原則禁止され、違反には罰則が科されます。
しかし、シロチョウザメは特定外来生物に指定されておらず、規制の対象外です。このため、飼育者の自主的な責任が求められます。
環境省は啓発活動を通じて、「ペットの放流が生態系に与える影響」を周知するキャンペーンを展開しています。
また、宍道湖自然館ゴビウスでは、捕獲されたシロチョウザメを展示し、来館者に外来種問題を考える機会を提供しています。
寺岡誠二さんは、「自然のものかどうかも同時に考えて、色んな思いを持ってみていただければと思います」と呼びかけています。
地元住民や観光客が、展示を通じて環境意識を高めることが期待されます。
さいごに
シロチョウザメの宍道湖での出現は、観賞魚飼育の放流問題と、それが宍道湖七珍や生態系に与える潜在的な影響を私たちに突きつけました。
環境省や地元施設の取り組みは進んでいますが、根本的な解決には、個々の飼育者の意識改革が欠かせません。
宍道湖の豊かな自然と食文化を守るためにも、ペットの責任ある飼育を心がけたいものです。
あなたも、身近な行動から環境保護を始めてみませんか。